AWSの請求額が予想以上に高額となる課題を抱えるケースは珍しくありません。本記事では、コストの内訳を可視化し、不要な支出を特定して削減につなげるための分析ポイントと、サービスについて解説します。1、AWSのコストを分析する目的とはAWSを利用する中で、「どのサービスにどの程度のコストが発生しているのか」が把握しにくいと感じることは少なくありません。このような状況において有効なのが「コスト分析」です。日々の利用状況を可視化し、無駄な支出の特定や、より適切なリソースの活用方法を検討するための重要なステップとなります。(1)コスト分析の目的コスト分析を行う目的について解説します。AWSは従量課金制を採用しており、利用状況によっては想定外のコストが発生する場合があります。こうした予期せぬコストの増加を抑制するには、日常的な分析の実施が不可欠です。主な目的は、次の3点に分類されます。無駄なコストの発見と削減リソースの最適な活用方法の検討予算内での計画的な運用の実現これらの取り組みにより、クラウドの運用効率を高めるとともに、社内におけるコスト意識の醸成にも寄与します。(2) コスト分析の活用事例AWSを導入している企業では、コスト分析を通じた運用改善が進められています。以下に、実際に行われた取り組みの一部をご紹介します。あるIT開発企業では、テスト用に構築していたサーバーを停止せずに放置していたことで、月間コストが想定以上に膨らんでいることが発覚しました。コスト分析の結果を受け、未使用リソースの整理ルールを策定し、以降、定期的に使用状況を確認する運用へと切り替え、年間数十万円規模のコスト削減を達成しています。また、別の企業では、営業部門が活用していたデータ分析基盤にかかるストレージコストが高騰している状況が確認されました。分析の結果、ストレージタイプを低コストのオプションに変更する判断に至り、性能を維持したままおよそ30%のコスト削減につなげています。コスト分析は単なる数字の確認ではなく、事業運営における具体的な改善策を導くための基礎情報として機能します。2、AWSでコスト分析を行う際のポイントAWSで効率的にコスト分析を行うためには、日々の運用に工夫を取り入れることが重要です。単に数値を確認するだけでなく、業務の中に分析の視点を自然に組み込むことで、過剰な作業負担をかけることなく、不要な支出を把握できるようになります。本章では、そのために意識しておきたい実践的なポイントをご紹介します。(1)適切なタグ付けまず大事なのが「タグ付け」です。AWSではコスト配分タグを活用して任意の単位でカテゴライズすることが可能です。タグとは、AWS上のリソースに名前をつけるようなもので、「これは開発用」「これは営業チームが使っている」といった情報を後から見やすくしてくれます。プロジェクト名やチーム、用途などをタグで整理しておくことで、どこで何にコストがかかっているのかが一目で分かるようになります。タグを適切に管理しておくと、スムーズにコスト分析を進めることが可能です。(2)リソース使用状況の把握次に意識したいのが、「どのリソースを、どれだけ使っているか」を知っておくことです。例えば、使っていないサーバーがそのまま稼働していたり、必要以上にスペックの高いストレージを使っていたりすることがあります。上記のように削減可能な不要リソースは、定期的に使用状況をチェックして見直すことが大切です。「今の使い方で本当に必要?」と見直すことで、無駄なコストを自然と減らせます。(3)定期的なレビュー分析や見直しは、一度やれば終わりというわけではなく、AWSでは料金や利用状況もプロジェクトや季節によって変化します。だからこそ、定期的に「今の使い方は適切か?」を確認する時間を持つことが大切です。毎週一度など、ルールを決めて定期的にレビューすることで、小さな見落としも防げるようになります。(4)コストアラートの設定思わぬ出費を防ぐために、「コストアラート」の設定もおすすめです。これは、「今月の利用料が○円を超えたら通知する」といった仕組みで、設定しておくだけでコストが増えてきたときにすぐ気づくことができます。使っていないのに動いているリソースがあった場合にも早く対応できるようになります。予算内におさめたい方や、複数人でAWSを利用している環境では、安心して使える工夫のひとつです。(5)ダッシュボードの活用最後にご紹介するのが、「ダッシュボード」の活用です。AWSには、利用状況やコストをひと目で確認できるダッシュボード機能があります。グラフや表で可視化されているので、変化や異常にすぐ気づけるのがメリットです。慣れないうちは少しハードルを感じるかもしれませんが、一度設定しておけば日々の管理がとてもラクになります。毎日のチェックにも役立ちますし、チームでの共有にも便利です。3、AWSでコスト分析を行うためのサービスAWSには、コストを可視化したり、無駄な支出を見つけるための便利なツールがそろっています。「使いすぎてしまうのが不安…」という方でも、これらのサービスを上手に活用すれば、安心してAWSを使い続けることができます。(1)AWS Cost Explorer最初に紹介するのは、AWSの利用状況を可視化する標準機能であるAWS Cost Explorerです。このサービスでは、どのサービスに対して、いつ、どの程度のコストが発生しているかを、グラフや表形式で視覚的に把握できます。日単位・月単位でのコスト推移が明確に表示されるため、コストが急増している領域の特定が容易になります。使い始めは操作に戸惑うこともありますが、基本的な機能は無料で利用できるので、まずは試してみることが大切です。(2)AWS Budgets次に「AWS Budgets」は、予算を設定し、予算に近ずいたらアラートが通知するサービスです。例えば「今月はこのくらいまでにコストをおさえたい」と決めたら、その金額を登録しておくだけで、予算を超えそうになったタイミングで通知してくれます。突然のコスト上昇に気づくことが可能なので、特に予算管理を適切に行いたい方におすすめです。(3)Trusted AdvisorTrusted Advisorは、AWSが提供する最適化支援サービスです。コストの無駄を減らすために、未使用リソースやアイドル状態のインスタンスなどを自動で検出し、改善のための推奨事項を提示します。例えば、使用されていないAmazon EC2インスタンスや、アイドル状態のElastic Load Balancerなどが対象となります。これにより、利用者は気づきにくいリソースの無駄を特定し、支出の削減につなげることが可能です。利用できるチェック項目の範囲は、サポートプランによって異なります。Businessプラン以上では、すべての診断機能が利用可能です。(4)AWS Cost and Usage ReportAWS Cost and Usage Report(CUR)は、より詳細な利用明細とコスト情報を取得したい場合に適したサービスです。数百万行単位のデータを含むCSVファイルを出力できるため、サービス別や時間単位の利用傾向、リソース単位での細かなコスト構造まで分析が可能です。社内での予算配分や詳細なコスト按分を行う必要がある場合や、独自の集計ツールと連携してレポートを自動生成したいときに活用できます。Cost Explorerでは対応しきれないレベルの分析が求められる場面において、CURは有効な選択肢となります。(5)AWS Compute OptimizerAWS Compute Optimizer は、過去の使用状況に基づいて、Amazon EC2 などのリソースが適切なサイズで運用されているかを分析し、最適な構成を提案するサービスです。CPU やメモリの使用率が低いインスタンスに対しては、より小さいタイプへの変更を推奨するなど、パフォーマンスを維持しながら無駄のない構成を支援します。一部のワークロードでは、ライセンスコスト削減を目的としたインスタンスタイプの変更やエディションの見直しも可能です。このように、Compute Optimizer を活用することで、リソース構成の見直しを効率的に進め、継続的なコスト最適化につなげることができます。4、AWSのコストを最適化する方法AWS環境では、要件の追加や構成変更に伴ってリソースが徐々に増えていくことが少なくありません。気づかないうちに利用範囲が広がり、不要な支出につながっているケースも見受けられます。本章では、AWSのリソースを適切に管理し、効率よく運用するために意識しておきたいポイントを紹介します。(1)リザーブドインスタンスの活用最初に検討すべき施策として、「リザーブドインスタンス(RI)」の活用が挙げられます。これは、あらかじめ「特定のインスタンスを一定期間使用する」ことを前提として契約することで、通常のオンデマンド料金よりも割安に利用できる仕組みです。例えば、オンデマンドインスタンスと比較して、50%以上のコスト削減が可能になる場合もあります。今後も継続的に利用する予定のあるインスタンスがある場合には、リザーブドインスタンスの導入を検討することで、長期的なコスト削減が期待できます。(2)不要リソースの停止・削除コストを見直す上で欠かせないのが、利用していないリソースを停止または削除することです。開発中に一時的に使用していたサーバーや、検証目的で立ち上げたインスタンスが残っている場合は、早期に対応する必要があります。これらを放置すると、意図しない支出の原因となります。夜間や週末など、稼働が不要な時間帯には、自動停止の設定を行うと効果的です。定期的に利用状況を確認し、不要なリソースを整理する習慣を持つことが、コスト最適化の第一歩となります。(3)ストレージの見直し最後に取り上げるのは「ストレージの見直し」です。AWSでは、データを保存するためのストレージに複数の種類が用意されています。例えば、頻繁にアクセスされるデータには高いパフォーマンスを備えたストレージが適していますが、古いバックアップや使用頻度の低いファイルについては、低コストなストレージへの移行が推奨されます。現在保管しているデータがすべて現行のストレージで適切に管理されているかどうかを見直すことは、コスト最適化の観点から重要です。ストレージの種類を見直すだけでも、月々のコストに大きな影響を与える可能性があります。5、AWSのコスト管理を全てひとつにしたサービス「srest」AWSにおけるコストは、利用方法によって大きく変動します。しかしながら、何から見直せばよいのか分からない、あるいは日常業務の中で十分な対応が難しいという課題を抱える利用者も少なくありません。弊社が提供するAWSコスト管理ツール「srest(スレスト)」は、AWSにおける複雑なコスト構造を可視化し、複数アカウントの一元管理、任意の単位でのコスト按分、アラート通知、など、コスト管理全般を支援するサービスです。コスト管理は一度見直して終わりではなく、継続的に改善していくことが大切です。srest(スレスト)であれば、誰でも使いやすいUIで、無理なく続けられる仕組みを提供しているので継続的なコスト最適化のツールとして向いています。