「AWS Cost Explorer」はAWSの利用ユーザの多くが利用するAWSのコスト管理サービスです。本記事では、AWS公式が提供するコスト可視化ツール「AWS Cost Explorer」について解説いたします。1、AWS Cost Explorerとは?AWS Cost Explorerは、Amazon Web Services(AWS)が提供するコスト管理ツールです。AWSの利用料金を可視化し、コスト最適化のための分析や予算管理などに活用することができます。(1)AWS Cost Explorerの概要AWS Cost Explorerは、AWSの公式ツールとして、AWSの各種サービスのコストを詳細に把握できるよう設計されています。主な機能は下記のとおりです。・AWS利用額の可視化・利用額の内訳の確認・時間軸でのコスト推移など多角的なコスト分析AWSの各サービスで発生している日々のコストを細かく分析できるため、無駄なコストを抑えるなどコスト最適化へのアクションを支援するサービスとなっております。AWS利用者は、まずCost Explorerを活用して自社のコスト構造の把握を行いましょう。(2)AWS Cost Explorerの料金体系(基本は無料、一部制限あり)AWS Cost Explorerは、基本機能であれば追加料金なしで利用できます。具体的には、過去最大14か月分のコスト/使用量データの可視化や、標準ダッシュボードの利用、レポーティングなどが無料で利用可能です。一方、以下のような高度機能を使う場合は追加課金が発生します。・時間単位のデータ取得:リソースレベルで1時間ごとのデータを取得する場合・APIリクエスト:プログラム等からAPIリクエストでコストデータを取得する場合。2、AWS Cost Explorerの代表的な機能AWS Cost Explorerの代表的な機能は下記の3つです。・AWS利用コストの可視化・分析・コスト予測・レポーティング本章ではそれぞれ具体的に何ができるのか解説します。(1)AWS利用コストの可視化・分析AWS Cost Explorerでは、AWSの使用状況と利用コストを可視化できます。日単位では、 過去14か月分まで遡ることが可能で、月単位では最大過去38か月分の履歴を有効にすることが可能です。AWSのサービスによっては、リソースレベルのデータを14日間可視化・分析することが可能です。また、日別の推移やフィルタリング・タグによるグループ化などによって、コストと使用量のデータを詳細に分析することができます。(2)利用コスト予測AWS Cost Explorerは、過去の利用データに基づき、今後12か月間のコスト予測を行うことができます。今後12か月間にどのくらい費やす可能性が高いかを予測し、リザーブドインスタンスの購入など事前に対策を行うことができます。(3)レポーティングAWS Cost Explorerは、カスタムレポートの作成・保存・共有することが可能です。任意の単位でフィルタリングやグルーピングを行い、グラフ形式を指定して、「レポート」として保存することができるので自身の分析したい粒度でデータを見ることができます。3、AWS Cost Explorerの活用ポイント4選本章では、AWS Cost Explorerを活用して効果的にコストを分析するために4つのポイントについて解説します。(1)フィルタリングを有効活用するフィルタリング機能を使うことで、特定のサービスやアカウントのコスト分析が容易になります。サービス別・アカウント別・タグ別のフィルタリング機能をうまく活用すると、詳細な分析が可能です。特定のプロジェクトやチームごとのコスト管理も容易になります。(2)時期毎に比較を行う時期ごとの比較は、コストの変動を理解するために重要です。日次・週次・月次・年次など、シチュエーションに合わせて効率的に比較を行いましょう。季節的な変動や特定のイベントによる影響を把握できるため、将来のコスト予測がより正確になります。特定の期間にリソースが集中している場合は、その原因を特定することで、事前の対策を講じることが可能になります。(3)適切なコスト予測を行うAWS Cost Explorerのコスト予測機能を活用することで、来季の予算計画を立てる際に役立ちます。過去のデータをもとに、適切な予測モデルを選択することで、予算の策定がスムーズになり、予測精度が向上してより戦略的な予算管理を実現できます。予測通りに進んでいるかを定期的に確認し、必要に応じて随時調整を行うことで、想定外の予算オーバーを防止しましょう。(4)リソース使用状況をこまめに確認するAWSのリソース使用状況をこまめに確認することで、無駄なコストの発生を未然に防げます。使用頻度が低いリソースについては、改めて必要性を検討して、必要に応じて削除してコスト削減につなげましょう。リソースの無駄遣いを防ぎ、より効率的な運用に近づけることで、全体的なコスト削減につながります。4、AWSのコスト関連サービスとAWS Cost Explorerの違い(1)AWS Cost CategoriesAWS Cost Categoriesは、AWSの利用料金やリソースのコストを任意のルールでグルーピングし、整理・分類できるサービスです。AWS Cost Categoriesを活用して任意の単位、例えばプロジェクト別や部門別など適切なグルーピングを行い、AWS Cost Explorerで可視化することが可能です。(2)AWS BudgetsAWS Budgetsは、AWSの利用コストや使用量に対し、ユーザーが任意の予算を設定し、その達成状況をモニタリングできるコスト管理サービスです。設定したしきい値を超えそうな場合、実際に超過した場合にメールやSNS、Slackなどでアラート通知を受けることができ、コスト超過の早期発見や未然防止に役立ちます。AWS Cost Explorerは利用コストの可視化、分析が主な役割ですが、予算ベースで達成度監視やアラートの通知を行う役割があります。(3)AWS Cost Anomaly DetectionCost Anomaly Detectionは、AWS利用料金における「異常なコスト増加」や「普段と異なる支出パターン」を機械学習で自動検出し、リアルタイムに通知できるサービスです。AWS Cost Explorerは日常的に活用するコストの可視化・分析の立ち位置ですが、AWS Cost Anomaly Detectionは能動的な異常発見をサポートする役割があります。(4)AWS Trusted AdvisorAWS Trusted Advisorは、AWSのベストプラクティスに基づいてリソースや設定を診断し、コスト最適化、パフォーマンス向上、セキュリティ強化、耐障害性向上などといったカテゴリで改善提案を提示するサービスです。AWS Trusted Advisorは、実際に最適化アクションを行う際に有効となるサービスです。5、AWS Cost ExplorerとAWSコスト管理ツール「srest」の違い本章では、AWS Cost ExplorerとAWSコスト管理ツール「srest」の違いについて解説します。AWSコスト管理ツール「srest」はAWSコストの各種サービスの機能を一元的に集約したサービスとなっています。(1)インターフェースAWSコスト管理ツールの「srest」は、エンジニアをはじめとした技術者でなくても直感的に操作が可能なサービスとなっております。(2)AWSコストの一元管理複数のAWSアカウントを運用する企業の場合、アカウントを横断してコストを把握するためにはPayerアカウント(Organizations)へのアクセス権が必要となります。しかし、企業の運用ルール等で一部制限されているなどの状況でもAWSコスト管理ツールの「srest」であれば、AWSコストの一元管理を実現し、横断的な可視化と分析することが可能です。(3)予算アラートの為替対応多くの企業では予算計画を円ベースで立てるでしょう。AWSコスト管理ツールの「srest」の予算アラート機能は任意で振り分けた単位で個別に予算を設定でき、最新のレートを反映した日本円ベースでの予算管理が可能です。まとめクラウドサービスの普及に伴いクラウドコスト管理の重要性が増していますが、国内ではクラウドサービスのコスト最適化は取り組んでいる企業が多くはありません。コスト最適化には、まず「可視化」をすることが重要です。AWSから公式に提供している「AWS Cost Explorer」やAWSコスト管理ツール「srest」を利用してコストの可視化から始めると良いでしょう。