AWSは使った分だけ支払う従量課金制が基本ですが、実際の料金はサービスの選び方や構成によって大きく変わります。本記事では、AWSのコストがどのように決まるのか、その仕組みをわかりやすく解説します。1、AWSの料金を決める3つの要素AWSの料金は「使った分だけ支払う」という従量課金制度の仕組みですが、中でも特にコストに大きく影響する3つのポイントがあります。それが「サーバー(コンピューティング)」「ストレージ」「データ転送(アウト)」の3つです。それぞれの仕組みを理解することで、無駄な出費を防ぎ、より賢くAWSを活用できるようになります。(1)サーバー(コンピューティング)の料金AWSでは、仮想的なサーバーを必要な時間だけ利用できるサービスが提供されています。代表的な例が「Amazon EC2」で、サーバーの稼働時間と性能に応じて料金が発生します。料金の仕組みは、家庭の電気代に近いものです。サーバーを長時間稼働させるほどコストが増加し、また、CPUやメモリのスペックが高いインスタンスを選択すれば、1時間あたりの料金も高額になるため、使用しない時間帯にはインスタンスを停止する、または過剰な性能を避けるといった対応が、無駄なコストを削減する上で有効です。(2)ストレージの料金ストレージは、写真やファイル、データベースなどのデータを保存する場所です。代表的なAWSのサービスに「Amazon S3」があります。料金は保存したデータの容量によって決まり、1GBごとに課金されるのが一般的です。また、アクセス頻度によって保存方法を選ぶことができ、すぐに取り出す必要があるデータは高く、滅多に使わないデータは低価格で保存できます。用途に合わせたストレージの使い分けが、コストを抑えるコツです。(3)データ転送(アウト)の料金AWSからインターネットに向けてデータを送るとき、その転送量に応じて料金が発生します。これを「アウトバウンド」と呼び、社内で使う分には無料でも、外部に出すときだけ課金される仕組みです。例えば、動画をAWSに保存してWebサイトから配信すると、その配信にかかる通信量に応じて課金されます。初めの一定量は無料でも、使いすぎるとコストが跳ね上がることもあるため、転送量の確認と、必要のない送信を減らす工夫で、予想外の請求を防ぐことができます。2、AWSの料金が決まる仕組みとは?AWSでは、使った分だけ料金が発生する「従量課金制」が基本です。月額固定ではなく、利用量に応じて請求額が変動するため、水道や電気と同じように使いすぎればコストも増加します。料金の仕組みを理解しておくことは、コスト管理の第一歩といえるでしょう。AWSの利用料金は、選ぶサービスや使い方によって大きく異なります。例えば、同じサーバーでも「いつまで使うか」「どれくらい使うか」「どの支払いプランを選ぶか」によって、最終的なコストは変わってきます。AWSには200種類以上のサービスが存在しており、それぞれに異なる課金ルールが設定されているため、コンピューティング、ストレージ、データ転送といった要素ごとに料金が発生する構造です。利用状況を意識せずに使い続けると、無駄な支出につながることもあるため注意が必要です。このような料金体系を理解すれば、AWSの柔軟性を活かしながら、無理なくコストを最適化することが可能になります。3、ケース別に見るAWSの料金目安AWSは利用するサービスや環境によって、コストが大きく変動します。実際にどのくらいのコストがかかるのか、具体的なケースをいくつか挙げて、目安となる料金を紹介します。(1)動的Webサイト構築の料金目安(月額約5~8万円)動的WebサイトをAWSで構築する場合、月額でおおよそ5~8万円程度のコストがかかることがあります。例えば、ECサイトや会員制のサービスなど、データベースとサーバーを連携させて動的にコンテンツを配信する場合です。これには、WebサーバーとしてAmazon EC2、データベースとしてAmazon RDS、そしてトラフィックの負荷を分散するためのElastic Load Balancerなどが必要です。また、SSL証明書やバックアップなどの追加機能も考慮に入れる必要があります。(2)Windowsファイルサーバー構築の料金目安(月額約15万円)AWSを利用してWindowsファイルサーバーを構築する場合、月額約15万円程度のコストがかかります。このケースでは、Amazon FSx for Windows File Serverを使って、ファイル共有環境を整えます。また、AWS VPNやアクティブディレクトリサービスを利用して、オンプレミスの環境と接続することが多く、セキュリティやパフォーマンスを考慮した設定が求められます。容量が大きくなると、さらにコストが増加するため、利用方法に合わせたプラン選びが重要です。(3)社内業務アプリ環境構築の料金目安(月額約30万円)社内業務アプリケーションをAWS上に構築する場合、月額で約30万円前後かかるケースがあります。とくにWindowsアプリケーションを移行する際は、Amazon EC2やAmazon RDS、Elastic Load Balancerなど複数のサービスを組み合わせる必要があるため、コストが上がりやすいです。この構成にはSQL Serverなどの商用データベース利用や、社内ネットワークとの接続といった追加要素も含まれるため、全体の料金設定は比較的高めとなります。長期利用を前提とする場合はリザーブドインスタンスを活用してコストを抑えられるため、運用の安定性とコスト効率を両立させる観点から、導入前に検討しておくとよいでしょう。(4)仮想デスクトップ(VDI)環境構築の料金目安(月額約5万円)リモートワーク支援の一環としてAWS上に仮想デスクトップ環境を用意すると、月額約5万円程度のコストが見込まれます。Amazon WorkSpacesを活用することで、ユーザーごとに専用の仮想デスクトップを割り当てられ、必要に応じたリソース調整が可能です。CPUやメモリのスペックを利用状況に合わせて変更できるため、業務負荷の変化にも柔軟に対応でき、サーバーやストレージ、セキュリティ設定なども含めた構成になるため、コスト管理には事前のプランニングが不可欠です。無駄な支出を抑えるには、ユーザー数や想定使用率を踏まえ、最適なインスタンスタイプ・ストレージ容量を選ぶことがポイントとなります。4、AWSの料金を見積もる方法AWSは自由度の高いクラウドインフラである一方、料金体系が複雑で、見積もりが難しいと感じられることもあります。そのため、正確な見積もりを作成するには、事前に確認すべきポイントを把握しておくことが重要です。本章では、AWSの料金を見積もる際に役立つ方法と留意点について、わかりやすく解説します。(1)AWS Pricing Calculatorの使い方AWSが公式に提供している「AWS Pricing Calculator」を使えば、自分の使いたいサービス構成に応じて、料金の見積もりを出すことができます。操作も比較的わかりやすく、使いたいサービス(例えばEC2など)を選び、リージョン、インスタンスタイプ、使用時間、ストレージ容量、転送量などを入力していき、複数のサービスを組み合わせて、全体の合計金額を出すことも可能です。見積もり結果はリンクで共有することもできるので、社内での稟議資料にも便利です。(2)見積もりの注意点見積もりを作成するときは、実際の運用をできるだけ正確にイメージすることが大切です。例えば、開発環境と本番環境の両方を用意する場合は、それぞれのコストを別々に見積もる必要があります。また、インスタンスをずっと起動したままにするのか、一時的に停止する時間帯があるのかによっても、料金は変わってきます。予測より使用量が増えると見積もりより高くなることもあるため、少し余裕を持った見積もりがおすすめです。(3)日本円での支払い方法と請求書払いの可否AWSの料金は基本的にUSドルで表示されますが、日本円での支払いも可能です。アカウント設定画面で支払通貨をJPYに変更すれば、クレジットカード払いで円建ての請求ができますが、請求書払いを希望する場合には条件があります。例えば、過去3か月の利用額が一定以上あることが必要です。また、請求書払いは基本的にUSドルでの銀行振込になるため、為替や送金手数料も考慮する必要があります。どうしても日本円で請求書払いを希望する場合は、AWS請求代行サービスの利用が選択肢となります。(4)AWSの請求を最適化するためのチェックポイントAWSの利用が増えると、思いがけないところで無駄なコストが発生していることがあります。定期的に請求内容を見直すことで、コストの最適化が可能になります。例えば、使っていないインスタンスやストレージが残っていないか、アクセスの少ないデータを高いストレージに保存していないかなどをチェックしてみましょう。また、必要に応じてリザーブドインスタンスやSavings Plansの利用を検討するのも効果的です。さらに、可視化ツールやコスト管理サービスを活用すれば、より正確に分析でき、継続的なコスト削減にもつながります。5、AWSの料金を節約する方法AWSは自由度が高く非常に便利なサービスですが、利用方法によってはコストが大幅に増加してしまう場合もあります。しかし、いくつかの工夫を取り入れることで、料金を効果的に抑えることが可能です。本章では、AWSを無理なく使い続けるために役立つ、具体的なコスト削減の方法を5つ紹介します。(1)AWS請求代行サービスを利用するAWSの請求代行サービスを利用すると、AWSからの直接請求ではなく、パートナー企業経由でまとめて請求してもらえるようになります。この仕組みを使うことで、日本円での請求書払いが可能になったり、サービスによっては利用料金が割引されたりすることもあります。特に社内で請求書処理が必要な企業や、クレジットカード決済を避けたい方にとって便利な選択肢です。コスト面だけでなく、管理の手間を減らせるのも大きなメリットです。(2)不要なリソースを停止・削除するAWSでは、利用していないリソースに対しても料金が発生している場合があります。例えば、開発用に立ち上げたまま放置されたサーバーや、不要になったストレージ、停止されていないテスト環境などが、無駄なコストの要因となることも少なくありません。これらのリソースは定期的に棚卸しを行い、不要なものは停止または削除することなど、継続的な見直しによって、確実なコスト削減が期待できます。(3)スポットインスタンスを活用するスポットインスタンスは、AWSの空きリソースを割安で利用できる仕組みです。通常のオンデマンドインスタンスと比較して、最大で90%以上もコストを抑えられる場合があります。ただし、他のユーザーがより高い価格で利用を申し込んだ場合には、自動的にインスタンスが停止される仕組みとなっているので、停止しても業務に支障が出ない一時的な処理や、バッチ作業などに適しています。利用用途を適切に選び、活用方法を工夫することで、全体のコストを大幅に削減することが可能です。(4)Savings Plansを利用するSavings Plansは、一定の使用量を1年または3年契約でコミットすることで、オンデマンド価格よりも大幅に割引される料金プランです。サービスを問わず柔軟に使える「汎用型プラン」や、特定のインスタンスに適用される「インスタンスプラン」などが選べます。継続的にAWSを利用する予定がある場合は、Savings Plansを導入することで確実にコストを下げられます。(5)リザーブドインスタンスを活用するリザーブドインスタンスは、Amazon EC2などのサービスを一定期間(1年または3年)予約購入することで、最大72%の割引を受けられる仕組みです。支払い方法は「全額前払い」「一部前払い」「前払いなし」から選べるため、予算に合わせて柔軟に対応できます。本番環境など、長期間安定して利用するインスタンスがある場合には、リザーブドインスタンスの活用が特に効果的です。6、複数アカウントを一元管理できるAWSコストツール「srest(スレスト)AWSの料金は、サービスの使い方や構成によって日々変動しますが、仕組みを正しく理解し、ムダを見直すことで十分にコントロールすることができます。AWSコスト管理ツール「srest(スレスト)」では、複数のAWSアカウントのコストを一元的に可視化し、部署やサービス単位での正確なコスト配分、無駄な支出のアラート通知、コスト削減のアドバイスまで、まとめてサポートしてくれます。AWSの運用をもっと安心・効率的に進めたい方は、ぜひsrest(スレスト)をご活用ください。