「SLA」「SLO」「SLI」は、SREの重要指標の1つです。これらの用語は、サービス品質と信頼性を確保するために不可欠な役割を果たしています。今回は、「SLA」「SLO」「SLI」について3つそれぞれの解説とそれぞれの違いや設定するためにはどうすれば良いか解説いたします。1、SLA(サービスレベル保証)とは?本章は、「SLA」について以下3つを解説いたします。SLAの具体的な内容SLAを設定するメリットSLAの注意点(1)SLAの具体的な内容SLA(Service Level Agreement)は、通常「サービスレベル保証」などと訳され、サービス提供者とクライアントの間でサービス品質に関する合意事項を定める重要な契約です。この契約には、サービス品質を保証するための具体的なレベルや条件が定量的に示されています。SLAは、一般的に以下の要素で構成されます前提条件:サービスレベルに影響を及ぼす業務上/システム上の前提条件委託範囲:合意された委託内容がカバーする範囲役割と責任:利用者とSaaS提供者の役割と責任を明確化した分担表サービスレベル項目:管理対象となるサービス別に設定される評価項目および要求水準結果対応:サービスレベルが達成されなかった場合の対応方法(補償)運営ルール:利用者とSaaS提供者間のコミュニケーション(報告・連絡)のルール/体制サービス提供者は、利用者が理解しやすいように、具体的な可用性やサービスの内容、数値化されたサービス品質基準、補償内容などを提示します。(2)SLAを設定するメリットSLA(Service Level Agreement)を設定する最大のメリットは、以下3つの透明性を確保できることです。①サービスの内容と提供範囲の明確化サービス提供者が提供するサービスの内容と提供範囲を明示することで、クライアントやサービス利用者は何を期待できるかを正確に把握できます。②サービスの品質レベルの確保サービス提供者は一定の品質水準を達成する責任を負うことで、クライアントに安心してサービスを利用していただけます。③運営ルールの透明化運営に関するルールやプロセスを共有することで、問題が生じた際でも迅速に対応が可能となります。透明性の確保は、サービス利用者からの信頼関係の構築に貢献し、クライアントからの信頼を獲得する一助となります。(3)SLAの注意点SLAは、具体的で明確な内容であるべきで、認識の齟齬を回避すべく曖昧な文言の表現を避け、提供する業務やサービスレベルの条件を出来るだけ定量的に定めるべきです。また、SLAに含まれる目標や基準は現実的で合理的である必要があり、過度な要求や不可能な目標の設定は避けるべきです。SLAの設定には難しいことがあり、適切なバランスを見つけるために、実行可能な契約条件を確立する必要があります。2、SLO(サービスレベル目標)とは?本章は、「SLO」について以下3つを解説いたします。SLOの具体的な内容SLOを設定するメリットSLOの注意点(1)SLOの具体的な内容SLO(Service Level Objective)とは、サービスレベルの目標・評価基準を定めた指標で、次章で解説するSLI(Service Level Indicator)を基に設定されます。具体的には、SLIはサービスの応答時間、エラー率、可用性等の定量的な測定値で、SLOは、SLIを基にサービスの品質に関する具体的な目標や要件を設定した値です。例えば、「サービスの可用性は99.9%以上である必要がある」といった具体的な目標がSLOとして設定されます。(2)SLOを設定するメリットSLOを設定するメリットは、下記3つです。①指標の確立SLOを設定することで、チーム内で共通の目標・指標を認識することができ、サービスの信頼性向上に向けて、一貫した方向性を持つことができます。目標達成度を監視し、問題を早期に検出して対処するプロセスが確立され、結果的に信頼性が向上します。②対応優先順位のサポートSLOは問題が発生した際に、対応の優先順位を判断する手助けをします。目標達成度の低下は問題のサインとして捉えられ、その原因を特定して解決するための迅速な対応が可能となります。③利用者満足度指標を確立し、対応優先順位の判断を早められた結果的に、安定したサービスを提供することで、利用者満足度の向上にも繋がります。(3)SLOの注意点SLO(Service Level Objective)には、一般的に公開する義務が課されていないため、SLOは顧客との契約ではなく、自社内で設定されるサービス品質の目標です。そのため、SLOには、SLA(Service Level Agreement)には含まれていない要素である、システムメンテナンス手順や目標作業時間などが含まれることもあります。また、SLOは通常、サービス提供者側で設定される目標であり、SLOを達成できなかった場合に罰則や返金などのペナルティは設けられていません。3、SLI(サービスレベル指標)とは?本章は、「SLI」について以下3つを解説いたします。SLIの具体的な内容SLIを測定するメリットSLIの注意点(1)SLIの具体的な内容SLIは通常、サービスのパフォーマンスを具体的に測定するための基準で、応答時間、エラーレート、システムの稼働時間など、顧客が直接体感するサービス品質の側面が含まれます。例えば、「99.9%の稼働時間」や「100ミリ秒以内の応答時間」など、具体的な数値でサービスの目標を設定します。(2)SLIを測定するメリットSLIに基づいてパフォーマンスを定期的に測定し、分析することで、サービスの品質向上に繋がり、顧客満足度の向上を図ることができます。(3)SLIの注意点SLIを設定する際には、現実的で達成可能な目標値を設定することが重要です。また、SLIの測定結果がビジネスの意思決定や改善活動に正しく反映されるよう、測定方法や分析プロセスを適切に設計する必要があります。更に、SLIはサービスの成長や変化に応じて定期的に見直し、更新することが求められます。4、SLA・SLO・SLIの違い「SLA」「SLO」「SLI」の違いについて以下3つを説明します。設定基準の違い公開有無違反時のペナルティ(1)設定基準の違いSLASLOSLI設定基準SLAは、クライアントとサービス提供者の間で合意される具体的なサービス品質基準を含む契約です。SLOは、サービス提供者が提供するサービスの品質水準を内部で設定し、維持するための目標です。SLIは、SLOの達成を測定するために用いられる具体的なパフォーマンス指標です。(2)公開有無SLASLOSLI公開有無SLAは、通常クライアントとサービス提供者の間で合意され文書化されるため、クライアントと提供者の契約書として存在し、一般に公開されます。SLOはサービス提供者の内部で設定され、一般的に公開する義務が課されているわけではないため、外部には公開されていないことがほとんどです。SLI(は、主にサービス提供者の内部で使用される技術的なパフォーマンスデータを含むため、その公開性はSLOやSLAとは異なります。一般的に、SLIはサービスの運用状態やパフォーマンスを監視するためのものであり、外部に公開されることは少ないです。(3)違反時のペナルティSLASLOSLI違反時のペナルティSLAには通常、サービス品質基準を達成できなかった場合の罰則や補償規定が含まれます。SLOはサービス提供者が自己評価と品質向上のために使用する内部目標であるため、ペナルティが設定されることはありません。SLIはサービスの実際のパフォーマンスを測定するための指標であり、サービス提供者が自身のサービス品質をモニタリングし、評価するために使用します。5、適切なSLA・SLO・SLIを設定するには適切なSLA・SLO・SLIを設定するための3つの考え方を紹介します。現実的で合理的改善と変化外部サービス利用(1)現実的で合理的競合他社との競争圧力などといった要因から、現実的で合理的な目標の設定から乖離してしまうという状況が往々にして発生します。しかし、目標が現実的で合理的ではなく、過度な要求や不合理な目標の設定は、結果として無駄な工数やコストをかけることになってしまいます。(2)改善と変化クライアントの要求、技術進化、市場競争など、様々な要因により状況は変化するため、SLAとSLO、SLIは、これらの変化に対応する必要があり、継続的な評価と改善が必要になります。(3)外部サービスの利用上記2点を加味することは、適切な目標の設定を行う上で重要ですが、長期的で持続可能な観点を持つ必要があり、非常に難しいため、外部の知見を入れることも選択肢の1つです。弊社ではSREやインフラ領域でお困りの企業様へ、SREの総合支援サービス「srest TEAM」を提供しております。▶︎https://srest.io/team複数プロダクトの構築・運用で得た経験やナレッジを活かして、「SLA」「SLO」「SLI」でお困りの方のご相談に乗ることも可能です。インフラ運用の効率化、インフラ構築・運用コストの削減、セキュリティレベルの向上の実現をsrestメンバーがお手伝いさせて頂きますので、お気軽にお問合せを頂ければ幸いです。まとめITサービスの提供において重要な要素であるSLA、SLO、そしてSLIについて解説しました。SLOは特定の品質目標を設定し、SLAはそれらの目標を達成できない場合の対応策を示す点で異なります。更に、SLIはサービスのパフォーマンスを具体的に測定する指標であり、SLOの達成を客観的に評価するための基準を提供します。安心して利用できるサービスを提供するためには、これら三つの要素、SLAとSLO、そしてSLIの適切な設定が不可欠です。