アプリケーションの監視とパフォーマンス管理(監視)は、アプリケーション全体の稼働状況を把握する上で、重要な役割を果たしています。本記事では、「APM」とは何か、詳しく解説いたします。1、APM(アプリケーションパフォーマンス管理/監視)とは?アプリケーションパフォーマンス管理(APM)とは、アプリケーションの動作やパフォーマンスを監視し、問題を検出して解決するためのソフトウェアツールやサービスのことです。APMは、エンドユーザーがアプリケーションを使用する際の体験を向上させる事を目的として使用されます。APMについて、以下の通り解説します。APM(アプリケーションパフォーマンス管理)の概要APM(アプリケーションパフォーマンス管理)の仕組み従来監視とAPMの比較(1)APMの概要APM(Application Performance Management/Monitoring)は、アプリケーションの動作やパフォーマンスを監視・測定し、問題やボトルネックを特定するためのツールです。APMは、アプリケーションの各レイヤー(フロントエンド、バックエンド、データベースなど)で発生するトランザクションのフローを追跡し、レスポンス時間やエラー率などの指標を収集・分析します。これにより、アプリケーションのパフォーマンスを継続的にモニタリングし、ユーザーエクスペリエンスを向上させることが可能です。APMの機能には、リアルタイムな監視、トランザクションのトレース、レポートやアラートの生成などが含まれます。(2)APMが必要とされている理由APM(アプリケーションパフォーマンス管理)が必要とされる理由は、マイクロサービスアーキテクチャ等、複雑化された現代のアーキテクチャに対して、ボトルネックを素早く特定することができ、システムの信頼性を向上させることができるからです。アプリケーションがスムーズに動作し、利用者に快適な体験を提供することは、顧客満足度の向上、サービス信頼性の確立、そして最終的に収益の増加に繋がります。APMツールは、アプリケーションのパフォーマンスをリアルタイムで監視し、問題を即座に検出して対応することを可能にします。これにより、ダウンタイムの削減や、問題発生時の迅速な問題解決が可能となり、アプリケーションの稼働率と性能を最適化するため、APMはサービスの信頼性を向上させるためには不可欠なツールです。(3)APMの仕組みトレースやトレーシングという言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?最近では、「分散トレーシング」という言葉もよく耳にしますが、トレースは分散システムに限らず、モノリシックなアプリケーションでもトレースすることが可能です。分散トレーシングは、分散されたシステム(マイクロサービスアーキテクチャ)間で通過するデータの流れを監視します。分散されたシステム間のデータの流れを監視するため、トラブル発生時は、データの経路を正確に確認することが可能です。対して、モノシリックなシステムは部分的に分散されておらず、全体が1つのモジュールでできていますが、トレースをすることが可能です。それでは、トレースの流れについてウェブアプリケーションが受け取ったリクエストを例で簡単に説明します。このリクエストがどのように処理され、画面が表示されるまでの一連の流れを追っていくことがトレーシングです。たとえば、以下のような流れになります。アプリケーションがリクエストを受け付けます。コントローラがリクエストを処理します。コントローラは、データベースから必要な情報を取り出します。取り出したデータを使って、画面を表示するための処理が行われます。上記が、トレースの基本的な流れです。このように、トレースを活用することで、アプリケーション内の各処理がどのように連携して動作しているのかを可視化し、理解することができます。(4)従来監視とAPMの比較従来の監視は、システム全体を監視していることに対して、APMは個々のトランザクションやリクエストレベルで監視しており、より利用者中心の監視を実現しています。従来の監視では、システム全体のメトリクスやログを収集し、インフラストラクチャやサーバーの状態を把握することに重きをおいていました。一方、APMはアプリケーションの利用者に焦点を当てており、個々のトランザクションやリクエストがどのように処理され、ユーザーにとってどのような体験となっているかを詳細にモニタリングします。利用者ユーザーの体験を詳細に把握し、パフォーマンスの問題や改善点を特定することは、ユーザー満足度の向上に直結します。2、APMの重要性APMには下記のような特徴があります。障害対応の迅速化運用コストの削減ユーザー損失の防止(1)障害対応の迅速化APMを導入することで、アプリケーション内の問題や障害を素早く検知し、迅速に対処することが可能になります。APMはアプリケーションの動作をリアルタイムで監視し、異常な動作やパフォーマンスの低下を検知することができる上、原因がどのプロセスであるかを紐づけて明確にすることが可能です。APMによる検知により、障害が発生した際に即座に通知を受け取り、原因を特定して修正することができます。その結果、障害への対応時間が短縮され、サービスの停止時間や影響を最小限に抑えることができます。APM検知による迅速な対応により、顧客満足度の向上やビジネスの信頼性の確保につながります。(2)運用コストの削減APMの導入により、アプリケーションの運用コストを削減することができます。APMはアプリケーションのパフォーマンスやリソースの利用状況をリアルタイムでモニタリングすることで、適切なリソースの配分や効率的な運用を支援するツールとしても機能します。無駄なリソースの使用や負荷の過剰な発生を防ぎ、運用コストを最適化することができる上、APMによって問題や障害が事前に検知されるため、予防的な対策を行うことで、将来的な障害の発生や修正にかかるコストを削減することも可能です。結果として、アプリケーションの運用コストを効果的に削減し、ビジネスの収益性を向上させることができます。(3)ユーザー損失の防止APMの導入によってアプリケーションの動作をリアルタイムで監視し、問題や障害の発生を早期に検知して対処することで、ユーザーがアプリケーションをストレスなく利用できるようになり、ユーザー損失を防止することができます。ユーザー損失の防止により、ビジネスの信頼性が向上し、顧客満足度が向上することが期待されます。3、APMを利用する際の注意点APMには以下のような注意点があります。コストの増加工数の増加(1)コストの増加APMは、便利な反面、コストが増加する可能性があります。APMツールやサービスの導入には、ライセンス料や導入コンサルティング費用などが発生する場合があります。また、導入後も運用やメンテナンスにコストがかかることがあり、必要な機能や規模に応じても追加のコストが発生することが考えられます。従って、APMを導入する際には、これらのコストを考慮し、予算内での適切な計画を立てることが重要です。(2)工数の増加APMの導入に伴い、運用チームの工数が増加する可能性があります。APMはアプリケーションやサービス内部で発生した情報を分析し、状況を把握するための重要なツールですが、これには管理対象のアプリケーションに対する理解や、分析スキルが必要とされます。APMの導入により、運用チームは新たな技術やツールに対応する必要が生じ、そのための設定やカスタマイズ、モニタリングなどの作業が増加します。その結果、運用チームの工数が増加し、業務の負荷が増える可能性があるため、APMの導入に際しては、運用チームのスキルやリソースを適切に確保し、効率的な運用体制を整えることが重要です。4、APMを利用するなら合わせて一元監視サービスの検討を弊社サービスの「srest」はAPMサービスであるDatadogや、その他PagerDuty、Sentryといったインフラ系サービスのイベントログの可視化・一元的管理サービスを提供しています。APMサービスや、その他インフラサービスの併用は、システム信頼性を向上させますが、それぞれのイベントログを確認する手間があるといったデメリットや、優先度が低いアラートまで通知され、対応の優先度を確認するのに時間がかかるといったデメリットがあります。弊社サービスは、APMを含む各種インフラサービスのイベントログをダッシュボードを用いて一元的に管理することができる基盤をAWS上で提供し、日常監視業務の負担を減らし、運用を効率化します。また、各種イベントログに対しても具体的なアラート条件を設定することが可能なため、優先度の高いアラートの対応に集中することが出来ます。(1)APMとクラウドインフラのログを横断可視化・検索イベントログの検索・ソート機能・日付指定やフィルタ機能を用いて、APM含む、その他インフラサービスで発生したイベントログを、サービスを横断した柔軟な検索が可能となります。また、監視ツールで計測しているSLOの計測値を複数サービスを横断する形でsrest上で可視化することで、複数サービスの健康状態を一元的にチェックすることができます。(2)条件設定したアラートのリアルタイム通知・可視化APM含む、その他インフラサービスで発生したイベントログに対して具体的なアラート条件を設定することができ、設定した条件を満たすイベントが発生した際は、自動的にSlackやメール等のコミュニケーションチャネルを通じて通知が送信されます。加えて、イベントログの収集により、一定期間内に繰り返し発生したアラートや、現在発生中のアラート情報をリアルタイムで可視化することが可能です。リアルタイム可視化によって、イベントログ見逃しによる対応の遅延解消をサポートします。まとめAPM(Application Performance Management/Monitoring)の重要性とメリット、そして注意すべきデメリットについて解説しました。APMを導入することで、アプリケーションの障害対応が迅速化され、運用コストが削減されるという利点があります。また、ユーザー損失を防止することで、顧客満足度を向上させることができます。しかし、APMの導入にはコストが増加する可能性や、運用チームの工数増加といった注意点も考えられます。これらの点を踏まえ、APMを導入する際には慎重な計画と適切なリソースの確保が重要ですが、適切にAPMを活用することで、アプリケーションのパフォーマンスや可用性を最適化し、ビジネスの成功に貢献することが期待されます。