AWSの利用料金において、どのサービスにどの程度のコストが発生しているかを正確に把握することは容易ではありません。このような課題を解決する手段の一つが「コスト配分タグ」です。コスト配分タグを活用することで、プロジェクトや部門単位でのコストを明確に把握でき、コスト管理の精度が向上します。本記事では、コスト配分タグの仕組みと具体的な活用方法について解説します。1、 AWSコスト配分タグとはAWSではさまざまなサービスを自由に使える一方で、どのプロジェクトやチームがどれだけコストを使っているのかを明確にするのは簡単ではありません。そんな課題に対応できるのが「コスト配分タグ」という仕組みです。リソースに目印となるコスト配分タグをつけておくことで、コストの内訳がわかりやすくなり、コスト管理の手間を大きく減らし、利用コストを正確に把握することができます。本章では、コスト配分タグが果たす3つの主な役割についてご紹介します。(1)コストを分類するAWSコスト配分タグのもっとも基本的な使い方は「分類すること」です。例えば、同じアカウント内で複数のプロジェクトを運用している場合、それぞれにコスト配分タグをつけておけば、「プロジェクトAにはいくら」「プロジェクトBにはいくら」と、コストをはっきり分けて確認できます。家計簿で「食費」や「光熱費」などに分類して記録するようなイメージです。コスト配分タグを活用して利用コストを分類しておくことで、どこにコストがかかっているのかが明確になり、見落としを防ぎやすくなります。(2)運用を効率化するコスト配分タグを活用することで、情報を探す手間を削減することが可能です。例えば、部署ごとに使っているリソースや、開発・本番などの環境別でコスト配分タグを設定しておけば、コストだけでなくリソースそのものの管理もスムーズに行えます。複数のチームでひとつのAWSアカウントを利用している場合でも、誰がどのリソースを使っているのかを可視化できるため、無駄の発見や整理につなげることが可能です。(3)透明性を向上するAWSの利用状況をコスト配分タグによって明確に整理することで、チーム全体の可視化が進みます。例えば「今月のコストが増えた理由」や「どのシステムにコストが集中しているのか」といった点についても、具体的な根拠を持って説明できるようになります。こうした情報は、経営層や予算管理を担う部門にとっても非常に有用です。2、AWSコスト配分タグのメリットコスト配分タグを活用することで、AWSの利用状況をより明確に把握できるようになります。ただの「目印」として扱われることもありますが、実際にはコスト管理や運用効率の向上に貢献する重要な仕組みです。本章では、コスト配分タグがもたらす代表的なメリットを五つの視点からご紹介します。(1)任意の単位でコストの可視化が可能リソースにコスト配分タグを設定しておくことで、事業部やチーム、プロジェクトなど、企業独自の管理単位に応じたコスト把握が可能になります。例えば「開発チーム」や「プロジェクトA」などのコスト配分タグを活用すれば、全体の利用料金の中から対象のコストのみを抽出し、内訳を迅速に確認できます。どの領域にコストが集中しているのかを把握しやすくなり、予算の再構成や不要な支出の見直しを行う際の判断材料としても有効です。(2)請求書管理を簡素化するコスト配分タグを活用してあらかじめ分類しておくことで、請求書の内容も整理された状態で確認できるようになります。「このコストはどのチームのものか」といった確認作業に時間を取られることがなくなり、経理や管理部門の負担軽減にもつながります。支払い処理や報告書の作成も滞りなく進められ、業務全体の効率化を図る上でも効果的です。(3)リソース使用を最適化するコスト配分タグを活用してリソースごとの用途を明確にすると、使われていないリソースや、必要以上に性能の高い構成なども見つけやすくなります。「本番環境」「開発用」などのコスト配分タグを活用すれば、目的に応じた最適なリソース構成ができるため、無駄なコストを抑えることにつながります。(4)リソース間の重複を減らす複数のチームが同じAWS環境を使っていると、似たようなリソースが重複して作成されてしまうことがあります。コスト配分タグを使って「どのチームが何を使っているのか」を明示すれば、同じような構成のリソースを新しく作る必要がなくなり、効率的な運用ができる上、重複による無駄なコストも防げます。(5)プロジェクトごとの予算設定が容易プロジェクトや部署ごとにコスト配分タグを設定しておけば、それぞれの単位で予算を管理しやすくなります。コスト配分タグを活用して作成されたコストレポートを確認することで、「今月は予算内に収まっているか」「来月に向けてどれほどのコストが想定されるか」といった判断が容易になります。予算の超過を事前に把握できるため、必要に応じて早めに対応策を講じることも可能です。3、AWSコスト配分タグでのコスト削減の具体的な手順AWSコスト配分タグを活用することで、どこに無駄があるのかを見つけ出し、効果的にコスト削減につなげることができます。本章では実際の流れに沿って5つのステップでご紹介します。(1) コスト配分タグを作成する例えば「プロジェクト名」「担当部署」「環境(開発・本番)」など、自社の管理しやすい基準でコスト配分タグのキーと値を決めていきます。リソースを分類しやすくなるように、わかりやすく一貫性のある名前を使うのがポイントです。(2)コスト配分タグを有効化するコスト配分タグは、作成してリソースに付与しただけではコスト分析に利用することができません。分析に活用するためには、AWSの「コスト配分タグ」設定画面から、対象のタグを有効化する必要があります。設定自体は一度の操作で完了しますが、反映までに最大24時間ほど要する場合もあるため、作業には時間的な余裕を確保しておくことが望まれます。(3)コストレポートを生成するコスト配分タグを有効化したら、次に行うのはコストレポートの作成です。AWSの請求ダッシュボードやCost Explorerを使って、コスト配分タグ別に分類された利用料金のレポートを確認できるようになります。レポートはCSV形式で出力できるので、Excelなどでの分析も可能です。(4)分析結果を確認する生成されたレポートを確認することで、どの部門や用途にコストが集中しているかを把握できるようになります。コスト配分タグごとのコストを並べて分析することで、特定の部署に過剰なコストが発生していたり、環境ごとに無駄が多く発生していたりする状況が可視化されます。こうした可視化によって、これまで見過ごされていたコストの偏りや不要な支出に気づくきっかけとなり、改善への第一歩につながります。(4)最適化プランを実行するコスト分析によって得られた情報を踏まえ、改善に向けた具体的な対応を進めていきます。例えば未使用リソースの停止や削除、インスタンス構成の見直し、スケジュールによる自動停止の設定といった対応が挙げられます。継続的にコスト配分タグとレポートを確認することで、最適化の取り組みが定着し、無駄を抑えた運用を維持しやすくなります。4、AWSコスト配分タグを利用したコスト管理のポイントコスト配分タグは非常に便利な仕組みですが、ただ使うだけでは効果を最大限に発揮できません。適切に運用するためにはいくつかのコツや注意点があります。本章ではより効果的にコスト配分タグを活用するための3つのポイントをご紹介します。(1)コスト配分タグの過剰利用を避けるコスト配分タグの数が多くなると、一見便利に見えるものの、管理が煩雑になりやすくなります。例えば意味の似たタグが複数存在する場合、どれを選べばよいか判断に迷いが生じることがあり、誤ったタグを付けてしまう原因にもなりかねません。必要な項目に絞り、構成を簡潔に保つことで、安定した運用につながります。(2)一貫したルールを設定する全社的にコスト配分タグを運用する場合は、タグの命名や使用方法に統一性を持たせることが重要です。例えば「環境」を示すタグであれば、「dev」「stg」「prod」といった表記に揃えることで、タグの重複や分類ミスを防ぐことができます。一方で、「Development」や「Dev」など表記ゆれがあると、集計や分析の精度に影響を及ぼし、運用の手間が増える要因となりますので、社内でガイドラインを設けるのがおすすめです。(3)定期的に見直しを行うAWSの環境は、プロジェクトやチームの変化に合わせて日々変化していきます。それに合わせてコスト配分タグも定期的に見直すことで、不要になったコスト配分タグの整理や、新たに必要な分類への対応がスムーズに行えます。月に一度のチェックや、四半期ごとの振り返りタイミングで見直すと効果的です。5、AWSコスト配分タグの活用事例コスト配分タグは日常的な運用から大規模な組織管理まで幅広く活用できます。本章では実際にどう使われているかを具体的に紹介しながら、その効果をイメージしていただけるような事例をご紹介します。(1)プロジェクトごとの分析開発チームが複数のプロジェクトを同時に進めている場合、それぞれのAWSリソースに「プロジェクト名」のコスト配分タグをつけておくことで、どのプロジェクトにどれだけコストがかかっているかを明確にできます。例えば「ProjectA」と「ProjectB」にそれぞれコスト配分タグを付与しておけば、Cost Explorerでコスト配分タグ別に絞り込み、月ごとのコストを簡単に比較できます。費用対効果の確認や不要なリソースの見直しにも役立ちます。(2)マルチアカウント管理企業によっては、チームごとにAWSアカウントを分けて運用していることもあります。そのような環境でも、コスト配分タグを活用すれば一貫したコスト管理が可能です。例えば、すべてのアカウントに「部門」「用途」「環境」など共通ルールのコスト配分タグを設定しておけば、組織全体の利用状況を横断的に分析することができます。マスターアカウントからの一括管理にもつながります。(3)予算超過の防止事前にコスト配分タグでプロジェクトや部署ごとの予算枠を明確にしておけば、毎月のレポートを見ながら「今月は使いすぎていないか?」といったチェックがしやすくなります。例えば毎月一定額以内に収めたい開発環境に「Env=dev」というコスト配分タグを設定し、Cost Explorerでそのコスト配分タグにかかるコストをモニタリングしていくことで、予算オーバーを早期に発見できます。コスト配分も一元管理!AWSコスト管理ツール「srest」AWSのコストを正しく把握し、最適なかたちで運用していくためには、まず「どこに、いくら使っているのか」を明らかにすることが大切です。コスト配分タグを活用することで、部門別やプロジェクト別のコストを可視化でき、日々の運用もぐっと管理しやすくなります。弊社が提供するAWSコスト管理ツール「srest(スレスト)」では、コストの按分を容易に行う機能があります。「もっと手軽に、もっと効率よく」AWSのコスト最適化を目指したいという方には、是非一度お試しください。