AWS環境で生成されるログは、システムの監視やトラブルシューティングに不可欠です。ログには、アプリケーションの動作状況、ユーザーの行動、セキュリティインシデントなど、さまざまな情報を詳細に記録しています。ログデータの適切な管理は、システム全体の信頼性とパフォーマンスを維持する上でも重要で、ログの管理を適切に行うことは、セキュリティの強化、運用効率の向上、コンプライアンスの遵守に直結します。しかし、AWS環境で生成されるログデータは膨大なため、ログデータの管理にはいくつかの課題があり、適切なツールや戦略が不可欠です。本記事では、AWSログの基本とその効果的な管理方法等について解説します。1、AWSログとは?AWSログとは、AWSにおけるリソース、サービスの動作、アクティビティを記録したデータの総称です。AWSログには、EC2インスタンスの操作ログ、S3バケットのアクセスログ、CloudTrailの管理イベントなどが含まれます。AWSログは、システムの正常な動作を確認したり、問題発生時のトラブルシューティングにも役立ちます。2、AWSログを適切に管理するメリット適切にAWSログを管理することには多くのメリットがあります。一般的に、セキュリティコンプライアンスの要件を満たす要素には、システムの健全性とパフォーマンスの監視、システム全体の効率化等が挙げられます。AWSログを管理することのメリットについて、下記で解説します。(1)セキュリティコンプライアンスAWSログは、セキュリティとコンプライアンスの観点から非常に重要です。ログを適切に管理することで、不正アクセスやデータ漏洩の兆候を早期に検知し、迅速に対処することができます。また、規制遵守のための証跡を確保することも可能です。特定の法規制に準拠するためには、詳細なログ記録とその保存が必須になります。(2)監視と通知AWSログを用いた監視と通知は、システム運用の観点からも非常に重要です。CloudWatch LogsやCloudTrailを使用することで、リアルタイムでログデータを収集・分析し、異常を検知した際にはCloudWatch AlarmやAmazon SNSと連携して通知を行うことができます。通知により、問題が発生した場合でも迅速に対応することができ、被害を最小限に抑えることができます。(3)イベント駆動型アーキテクチャAWSログを活用したイベント駆動型アーキテクチャは、システムの柔軟性や自動化といった観点で重要です。例えば、CloudTrailのイベントをトリガーとしてLambda関数を実行することで、特定の条件下で自動的にアクションを実行できます。上記アクションにより、運用コストの削減等が可能となり、システム全体の効率が向上します。3、AWSログを管理するには?AWSログの管理手順AWS環境で生成される膨大なログデータを効率的に管理することは、システム運用やセキュリティの向上に欠かせません。適切なログ管理手順を踏むことで、必要な情報を迅速に取得し、問題の早期発見と対応が可能になります。AWSログの管理対象選定から収集、保管、可視化、分析まで、効率的な管理手順について解説します。(1)AWSログの管理対象の選定AWSログの管理を始めるには、まずどのログを管理するかを選定する必要があります。セキュリティや運用において重要なログを特定することが重要です。例えば、EC2の操作ログ、IAMの認証ログ、VPCフローログなどが該当します。これらのログを選定することで、重要なデータに集中して効果的に管理することができます。(2)AWSログの収集AWSログの収集は、CloudWatch Logs、CloudTrail、VPC フローログなどのサービスを利用して行います。CloudTrailはAWSアカウント内の全てのAPIコールを記録し、CloudWatch Logsはアプリケーションやシステムのログをリアルタイムで収集します。また、VPCフローログは、Amazon Virtual Private Cloud (VPC) 内のネットワークトラフィックをキャプチャするための機能です。上記により、ログデータを一元的に収集・管理し、分析に必要な情報を常に最新の状態で保持することができます。(3)AWSログの保管収集したログデータは、適切なストレージに保管することが重要です。一般的には、Amazon S3を利用してログデータを長期間保存します。S3のライフサイクルポリシーを設定することで、一定期間が経過したログデータを自動的にアーカイブしたり削除したりすることができます。ライフサイクルポリシーの設定により、ストレージコストを最適化しつつ、必要なデータを保管することが可能です。(4)AWSログの可視化(取得状況確認)AWSログの可視化は、ログデータの取得状況を確認するために重要です。CloudWatch ダッシュボードを利用することで、ログの収集状況や特定のメトリクスを視覚的にモニタリングできます。また、CloudWatch Logs Insightsを用いることで、ログデータをクエリし、詳細な分析結果を得ることもできます。CloudWatch ダッシュボードによって、可視化されたシステムのパフォーマンスを確認することが可能です。(5)AWSログの分析AWSログの分析は、CloudWatch Logs InsightsやAmazon OpenSearch Serviceを使用して行います。Logs Insightsを用いることで、複雑なクエリを実行し、ログデータの中から重要な情報を抽出できます。また、OpenSearchを利用することで、ログデータをインデックス化することで検索機能を利用することが可能です。AWSログの分析により、問題の根本原因を迅速に特定し、適切な対応が可能となります。4、AWSログ管理における課題AWSログ管理は、コンプライアンス遵守、システムの健全性向上に不可欠です。しかし、AWSログ管理を実現する上でいくつかの課題があります。AWSログ管理における主な課題と解決策について解説します。(1)ログの可視性とアクセス性AWSログ管理において、ログの可視性とアクセス性は重要な課題の一つです。膨大なログデータの中から必要な情報を迅速に見つけ出すのは困難です。上記課題を解決するためには、ログデータの適切なフィルタリングや、CloudWatch Logs Insights等のサービスを活用し、適切にクエリを実行することで必要な情報を効率的に抽出する必要があります。また、IAMポリシーを用いてアクセス制御を強化し、必要なユーザーのみが特定のログにアクセスできるようにすることで、セキュリティと可視化を両立させます。(2)ログの膨大なデータ量AWS環境では、ログデータの量が非常に多くなることが一般的です。ログデータの増加により、ストレージコストの増加やログ管理の複雑化といった課題が発生します。この課題を解決するためには、ログデータのライフサイクル管理が重要です。Amazon S3のライフサイクルポリシーを活用して、一定期間が過ぎたログデータを自動的にアーカイブまたは削除することで、ストレージコストを最適化できます。また、ログデータのフィルタリングと集約を行い、重要な情報のみ保存することで、データ量を削減することで、ログ管理を効率化することが可能です。(3)リアルタイムログ分析リアルタイムでのログ分析は、システムの健全性を維持するために不可欠ですが、これもまた課題の一つです。リアルタイムでログを監視し、異常を即座に検出するためには、適切なサービスとアーキテクチャが必要です。Amazon Kinesis Data Firehoseを利用してログデータをリアルタイムに取り込み、CloudWatchアラームを設定して異常検知時に即座に通知を行うことで、迅速な対応が可能となります。これにより、システムの被害を最小限に抑え、運用の信頼性を高めることができます。5、AWSログを効率的に管理するには?弊社では、ダッシュボード上でAWSログ含む、各インフラサービス等のログを一元管理・可視化することで、効率的なログ監視を行うことができる「srest」を提供しております。AWSログに限らず、各インフラサービスのログに対してログデータの加工を行っているため、Amazon Web Services(AWS)をはじめ、Datadog、PagerDuty、Sentry といったインフラ系サービスのイベントログ可視化をアカウントを跨いで一元管理可能です。更に、ログ収集や可視化に必要なエンジニアのリソースを追加で用意する必要はなく、システム運用の負担を軽減しつつ、迅速に効果的なログ監視を提供します。(1)AWSログの横断監視イベントログ検索・ソート機能・日付指定やフィルタ機能を用いて、イベントログをアカウントを跨いで柔軟な検索を行うことで、インシデント発生時の調査対応を効率化します。また、監視ツールで計測しているSLOの計測値を複数サービスを横断する形でsrest上で可視化することで、複数サービスの健康状態を一元的にチェックすることができます。(2)AWSログのリアルタイム通知が可能イベントログに対して具体的なアラート条件を設定することができ、設定した条件を満たすイベントが発生した際は、自動的にSlackやメール等のコミュニケーションチャネルを通じて通知が送信されるため、インシデント発生時やセキュリティ侵害による不正等を迅速に検知します。(3)ログの見逃しを防ぎ早期検知につながるイベントログの収集により、一定期間内に繰り返し発生したアラートや、現在発生中のアラート情報をリアルタイムで可視化することが可能です。リアルタイム可視化によって、イベントログ見逃しによる対応の遅延発生を防止します。まとめ本記事では、AWS ログ管理について、概要から、メリット、管理手順、管理における課題をご紹介させて頂きました。AWSログを適切に管理することで、システムの信頼性が向上するだけではなく、システム全体の効率性向上にも繋がります。