近年、ソフトウェアサービス(SaaS)などの普及により、サービスを構築する際のインフラ環境もクラウドインフラを活用する企業が増えてきました。クラウドインフラはその拡張性や柔軟性、そしてコストの削減効果が期待されることから多くの組織にとって魅力的な選択肢となっています。このようなクラウドの普及に伴い、安定した利用やセキュリティ確保のために「クラウドインフラ監視」という取り組みの重要性がますます高まっている状況です。本記事では、クラウドインフラ監視の基礎知識や、オンプレミス監視との違い、クラウドインフラをより効率的に行うツールについて解説します。1、クラウドインフラ監視とはクラウドインフラ監視は、クラウドインフラ上で動作するサービスやシステムの監視、分析、管理を指します。クラウド監視について、下記2つを説明します。クラウドインフラ監視の概要クラウドインフラ監視とオンプレミス監視の違い(1)クラウドインフラ監視の概要クラウドインフラには多種多様な製品やサービス、重要なデータを扱うものが存在し、それらを適切に保護し、最適な状態を維持するために「クラウドインフラ監視」は欠かせない業務となっています。具体的には、システムやアプリケーションの動作状況をリアルタイムで把握し、性能低下や障害を早期に検知して対処すると同時に、ログデータを収集・分析してセキュリティ侵害を防ぎます。クラウドインフラ環境では、クラウドサービス提供事業者がインフラの管理を行っているため、監視が不要と思われることもありますが、利用者側でもサービスの停止や性能低下がビジネスに及ぼす影響を考慮し、24時間体制で監視を行う必要があるでしょう。また、マルチクラウドインフラ環境ではさらに複雑な監視が求められるため、効率的な監視ソリューションの開発が求められています。(2)クラウドインフラ監視とオンプレミス監視の違い従来のオンプレミス監視とクラウドインフラ監視では、監視項目に大きな違いはありませんが、監視対象の場所が異なります。オンプレミス監視では、組織が自社内に構築した機器を管理しますが、クラウドインフラ監視ではクラウド上のインフラやアプリケーションが対象です。オンプレミス監視では、一般的に何らかの問題が発生した場合は、物理的にサーバ機器がある場所まで出向いて対応する必要があります。リモートで対応できるような環境を構築することは可能ですが、オンプレミスの特性上、物理ディスクの破損等が発生した場合は現地での対応が必須となるデメリットがあります。クラウド監視ではハードウェアの監視が不要であり、OS以上のレイヤーでの監視に集中します。また、クラウドサービス提供事業者側で準備した監視ツールを活用することが特徴であり、監視専用ツールとクラウド提供のツールの両方を利用することが効率的です。2、クラウド監視が必要なケースクラウド監視が必要なケースを、下記3つのケースで説明します。クラウドインフラ上で顧客向けサービスを提供しているケースクラウドインフラ上で社内システムを構築しているケースビジネスコンプライアンスの確保が必要なケース(1)クラウドインフラ上で顧客向けサービスを提供しているケースクラウドインフラ上で顧客向けサービスを提供しているケースでは、顧客の利用体験とサービスの可用性が非常に重要です。顧客がサービスを利用できない状況や、サービスのパフォーマンスが低下した場合、顧客のサービス利用満足度が低下してしまう恐れがあります。そのため、クラウドインフラ監視を通じて、サービスの停止や障害を早期に検知し、迅速に対処することが不可欠です。また、クラウドインフラ監視を活用して、サービスのパフォーマンスを定期的にモニタリングし、ボトルネックや負荷の高い箇所を特定して最適化することで、顧客の利用体験を向上させることが可能です。更に、セキュリティの観点からも、クラウドインフラ監視を行うことで不正アクセスやセキュリティ侵害を検知し、顧客データの安全性を確保することができます。(2)クラウドインフラ上で社内システムを構築しているケースクラウドインフラ上で社内システムを構築しているケースでは、社内の業務効率とセキュリティが重要な課題です。社内システムの稼働状況やリソースの使用状況を常に把握し、問題が発生した場合には迅速に対処することが求められます。クラウドインフラ監視を利用することで、システムの監視やモニタリングを自動化し、人的ミスや遅延を防ぐことができます。また、セキュリティの観点からも、クラウドインフラ監視を通じて不正アクセスやデータ漏洩などのリスクを常に監視し、防御策を強化することが必要です。クラウドインフラ監視を行うことで、社内システムの安全性と信頼性を確保し、業務の円滑な運用を支援することができます。(3)ビジネスコンプライアンスの確保が必要なケースビジネスコンプライアンスの確保が必要なケースでは、業界や地域の規制や法令に適合することが不可欠です。例えば、金融機関や医療機関のような個人情報や機密データを取り扱う企業では、クラウドインフラ上でのアクセスや操作ログの監視が重要です。顧客のプライバシーを保護するために、誰がいつデータにアクセスしたかや、どのような操作を行ったかを監視し、不正アクセスやデータの漏洩を早期に検知する必要があります。クラウドインフラ監視を利用して、コンプライアンス要件を常にモニタリングし、適切な対策を講じることが可能です。更に、セキュリティやデータ保護の観点からも、クラウドインフラ監視を行うことで不正アクセスやデータ漏洩などのリスクを検知し、適切な対策を講じることができます。ビジネスコンプライアンスを確保するためには、クラウドインフラ監視が不可欠なツールであり、組織の信頼性と法的なリスクを最小限に抑えるために重要な役割を果たします。3、クラウドインフラ監視のポイントクラウドインフラ監視を行う上で重要なポイントを下記2つ紹介します。監視対象の明確化と優先順位付け自動化と通知システムの導入(1)監視対象の明確化と優先順位付け監視対象の明確化と優先順位付けは、クラウドインフラ監視を効果的に行う上で欠かせない要素です。監視対象が多すぎると、監視データの取得や処理に時間がかかり、運用負荷が増大するため、監視対象を必要最低限の範囲に絞り込み、不要な監視項目を排除することで運用負荷を抑えることができます。更に、監視対象を分類し優先順位付けすることで、重要度に応じた対応ができるようになり、重要な問題に優先的に対処することができます。ただし、監視項目を絞りすぎて、必要な監視項目を見落とさないように注意が必要です。適切なバランスを保ちながら、必要最低限の監視対象を明確に定義し、優先順位付けを行うことが、効果的なクラウドインフラ監視のポイントです。(2)自動化と通知システムの導入クラウドインフラ監視では、自動化と通知システムの導入が重要です。監視データの収集やアラート通知を自動化することで、人的ミスや手作業による遅延を防ぎます。また、異常が検知された場合には、適切な担当者や管理者に即時に通知する仕組みを導入することで、迅速な対応が可能です。自動化と通知システムの導入により、監視業務の効率化と効果的な問題解決が実現されます。4、クラウドインフラ監視を効率的に行うツールクラウドインフラ監視を効率的に行うことができるツールを以下3つ紹介します。SaaS型監視サービスオンプレミス型監視サービスイベントログ一元監視サービス(1)SaaS型監視サービスSaaS型監視サービスは、クラウド上で提供される監視ソリューションであり、企業が自社のシステムやアプリケーションのパフォーマンスや可用性を監視するためのツールです。これらのサービスは、特別なハードウェアやソフトウェアを購入する必要はなく、インターネット経由でアクセスできるダッシュボードやコンソールを介して監視データをリアルタイムで確認できます。また、多くの場合、事前に設定されたアラートや通知機能が提供され、異常が検出された際にユーザーに通知されることがあります。SaaS型監視サービスは、企業がシステムの監視を迅速かつ効率的に行うことが可能です。(2)オンプレミス型監視サービスオンプレミス型監視サービスは、企業内で自社のシステムやネットワークを監視するためのソリューションです。オンプレミス型のサービスは、自社のインフラストラクチャーに専用の監視システムやソフトウェアを導入し、システムの稼働状況やパフォーマンスを監視します。通常、この監視ソリューションは、オンプレミスのサーバーにエージェントをインストールすることで、システムやネットワークの活動を監視し、問題が発生した場合には適切なアラートを発行します。また、一部のオンプレミス型監視サービスは、クラウドインフラ上のシステムにも導入することができ、オンプレミスの監視システムと同様にリアルタイムでシステムの状態を監視することが可能です。このような柔軟性により、企業はオンプレミスおよびクラウドインフラ上のシステムの両方を統合して監視することができ、より包括的な監視体制を構築することができます。5、イベントログ一元監視サービス「srest」イベントログ一元監視サービスとは、上記のような監視サービスを利用し、より一元的な監視を実現できるダッシュボードや機能を提供しています。弊社が提供する「srest」は、AWSやDatedogをはじめとしたインフラ運用に関わるイベントログを横断して可視化するイベントログの一元監視サービスです。AWSやDatadog、Sentryなどから通知されるイベントログを集約する仕組みとなっており、複数サービスの運用の場合でも、一元管理されたダッシュボードを確認することで、システムのどこで問題が起きているかをすぐに把握することが可能となります。Amazon EventBridgeと各サービスが提供するWebhook APIの機能を利用して、「srest」への各種イベントログ集約を実現しております。更に、ダッシュボードを実現する上で必要な、視認性やトレーサビリティといった要素に対応した機能を提供しています。横断検索・横断可視化リアルタイム可視化・通知(1)横断検索・横断可視化イベントログの検索・ソート機能・日付やフィルタ機能を用いて、過去に発生したイベントを、サービスを横断した柔軟な検索が可能となります。また、監視ツールで計測しているSLOの計測値を複数サービスを横断する形でsrest上で可視化することで、複数サービスの健康状態を一元的にチェックすることができます。(2)リアルタイム可視化・通知イベントログに対して具体的なアラート条件を設定することができ、設定した条件を満たすイベントが発生した際は、自動的にSlackやメール等のコミュニケーションチャネルを通じて通知が送信されます。加えて、イベントログの収集により、一定期間内に繰り返し発生したアラートや、現在発生中のアラート情報をリアルタイムで可視化することが可能です。リアルタイム可視化によって、イベントログ見逃しによる対応の遅延解消をサポートします。弊社が提供する「srest」を導入いただくことによって、ITインフラの全体像を一元的に把握でき、オブザーバビリティ実現の補助や、イベントログ一覧表示により日常業務を大幅に効率化するといったメリットがあります。まとめクラウドインフラの監視について包括的に解説しました。クラウドインフラは現代のビジネスにおいて必要不可欠なリソースとなっていますが、その安定性を確保するためにはクラウド監視が重要となります。監視業務の負荷を軽減することもクラウドインフラ監視の重要な課題であるため、適切なアプローチを選択する必要があります。例えば、クラウドインフラ監視の外部委託や、自動化ツールの活用などが挙げられます。これらの手法を用いることで、業務負荷を減らしつつ、効率的な監視を実現しましょう。