Amazon Elastic Compute Cloud(以降、Amazon EC2)は、クラウド上にサーバー環境を手軽に構築できる非常に利便性の高いサービスで、用途に応じて性能やコストを柔軟に調整できるため個人から企業まで幅広いニーズに対応します。本記事ではAmazon EC2の基本的な特徴やメリット、料金体系について、初めての方にもわかりやすくご紹介していきます。1、Amazon EC2とはAmazon EC2は、AWSが提供するクラウドサービスのひとつで、必要なときにサーバーをすぐに使える便利な仕組みです。本章ではAmazon EC2がどのようなサービスなのか、3つの視点からご紹介します。(1)仮想サーバーの提供Amazon EC2はインターネット上で使える「仮想サーバー」を提供しているサービスです。物理的なサーバーを用意することなく、パソコンやスマホの画面から操作するだけで、サーバーをすぐに立ち上げることができます。Amazon EC2では「インスタンス」と呼ばれる単位で仮想サーバーを作成し、用途に応じた性能(CPU・メモリ・ストレージなど)を自由に選ぶことが可能です。ウェブサイトの公開やアプリケーションの運用など、さまざまな用途に対応できるため、個人から企業まで広く活用されています。(2)従量課金制を採用Amazon EC2は「使った分だけ支払う」という従量課金制を採用しています。サーバーを動かした時間や、使ったデータ量に応じて料金が発生するため、無駄なコストがかかりにくいのが特徴です。例えば、開発のテスト用に数時間だけ使う場合でも、その時間分の料金で済みます。さらに、長期間使う場合は「リザーブドインスタンス」や「Savings Plans」といった割引制度も用意されており、使い方に合わせて柔軟にコストを管理できます。(3)グローバル展開可能Amazon EC2は、世界各地に設置されたデータセンター(リージョン)からサーバーの設置場所を選べる点が大きな特長です。例えば、アメリカやヨーロッパ、アジアなど、サービスを利用するユーザーが多い地域にサーバーを配置すれば、表示速度や通信の安定性を高めることができます。さらに、予期せぬトラブルに備えて、異なるリージョンにもサーバーを立てておくことで、信頼性と安全性を両立した運用が可能になります。2、Amazon EC2の主な特徴Amazon EC2は単にサーバーを動かせるだけでなく、柔軟な使い方や高い信頼性、多様な設定が可能な点でも優れています。本章ではAmazon EC2の代表的な7つの特徴をご紹介します。(1)スケーラビリティの高さAmazon EC2はサーバーの数や性能を自由に増減できるスケーラビリティの高さが魅力です。例えばアクセスが急に増える時間帯には自動的にサーバーを増やし、落ち着いた時間帯には減らすといった調整が可能です。これによりサーバーの無駄を減らしながら、必要な性能を確保することができます。(2)柔軟なリソース管理Amazon EC2ではCPUやメモリ、ストレージの性能を細かく選べるため、用途に合わせて最適なインスタンスタイプを選ぶことができます。さらにコストを抑えたい場合は、Graviton(g)やAMD(a)といったコストパフォーマンスに優れたタイプも選択できます。システムの成長や予算に応じて、段階的に構成を見直すことも容易です。(3)短時間での構築Amazon EC2は物理サーバーのように時間をかけて機器を準備する必要はなく、数分で仮想サーバーを立ち上げることができます。設定済みのテンプレート(AMI)を使えば、何度でも同じ構成でサーバーを作成できるため、開発・テスト・本番など複数の環境を素早く用意できます。(4)高い可用性と耐障害性Amazon EC2は世界各地のデータセンター(リージョン)にまたがって構成を組めるため、万が一の障害にも強い仕組みになっています。同じ地域内でも複数の場所(アベイラビリティゾーン)にサーバーを分散させることで、自然災害や障害が起きてもサービスを止めずに稼働させることが可能です。(5)セキュリティ設定の柔軟性)Amazon EC2では、仮想ファイアウォールや公開鍵による認証など、必要に応じたセキュリティ対策を手軽に導入できます。例えば、セキュリティグループを活用することで、許可する通信範囲を細かく設定でき、不要なアクセスを効果的に制限できます。さらに、踏み台サーバーを設けなくても、AWS Systems Managerを通じてインスタンスに安全なアクセス経路を確保することが可能です。(6)データストレージ管理Amazon EC2で使用するストレージは用途に応じて最適なタイプを選べます。代表的なEBS(Elastic Block Store)は、データの永続保存ができる安心のストレージです。さらに、EBSのアップデートに対応しながら切り替えることで、性能を維持しながらコストを抑えることもできます。使わなくなったストレージやAMIを削除することで、不要なコストも削減できます。(7)アプリケーションの迅速なデプロイAmazon EC2を使えば、開発したアプリをすぐに本番環境で動かせるようになります。インスタンスのコピー機能を使えば、安全に新しいバージョンのアプリをリリースすることも可能です。CI/CDとの連携もスムーズで、開発から運用までを効率よく進められます。3、Amazon EC2を利用するメリットAmazon EC2には、仮想サーバーとしての基本機能だけでなく、導入や運用のしやすさ、コスト面での工夫など、さまざまなメリットがあります。本章では主な3つのメリットについてご紹介します。(1)コスト最適化効果が期待できるAmazon EC2は、使った分だけ支払う「従量課金制」を基本としているため、必要以上のコストをかけずに利用できます。また、長期間の利用があらかじめ決まっている場合には「リザーブドインスタンス」や「Savings Plans」といった割引制度を活用することで、最大70%程度のコスト削減も可能です。さらに、夜間や週末の停止、Gravitonなどのコスト効率に優れたインスタンスタイプを選ぶことで、コストの最適化を期待することができます。(2)運用の手間が軽減されるAmazon EC2では、サーバーの立ち上げから拡張、監視、バックアップといった作業まで、さまざまな運用を自動化する機能が用意されています。例えば、AWS Systems Managerを使えば、複数のインスタンスをまとめて管理したり、特定の時間にインスタンスを起動・停止する設定も可能です。このようにして日々の運用にかかる時間や人手を大幅に減らすことができ、開発やサービス改善といった本来の業務に集中できます。(3)リスクが軽減されるクラウドであるAmazon EC2を使うことで、物理的な故障や災害によるリスクを大きく軽減することができます。データセンターが世界中に分散しているため、万が一ある地域でトラブルが起きても、他のリージョンでサービスを継続できます。また、サーバーのコピーや自動バックアップなどを活用すれば、常に安全な状態でデータやアプリケーションを管理することが可能です。4、Amazon EC2のインスタンスタイプの選び方Amazon EC2では用途に応じてたくさんのインスタンスタイプが用意されています。本章では、どのような基準で選べばいいかを5つのポイントに分けてご紹介します。(1)要件に応じたCPU選択システム構築においては、求められる処理能力に応じたCPUの選定が重要となります。例えば、簡易な検証や軽量な作業を行う場合には、低スペックのCPUでも十分に対応可能です。一方で、動画のエンコードや大規模なデータ集計など、高い演算処理が求められる用途では、より高性能なCPUを搭載したインスタンスを選ぶ必要があります。CPUの種類やスペックによって処理速度や効率に大きな差が生じるため、目的に応じた適切な構成を検討することが、安定した運用につながります。(2)メモリ容量の検討次に、必要なメモリ容量を検討します。メモリは「作業台」のようなもので、同時に扱うデータが多いほど広い作業スペースが必要になります。例えば、データベースや分析処理など、常にたくさんの情報を扱う場合には、メモリを多く搭載したタイプを選ぶと安心です。(3)ネットワークパフォーマンスの検討インターネットや他のサービスとの通信が多い場合は、ネットワークの性能も重要です。アクセスが多いウェブサービスや、複数のサーバー間でデータをやり取りするようなシステムでは、ネットワークの帯域が広いインスタンスタイプを選ぶことで、通信の遅延を防ぐことができます。情報のやりとりがスムーズになることで、利用者の満足度も向上します。(4)ストレージオプションの選定保存するデータの種類や量に応じて、ストレージの種類も選びましょう。例えば、頻繁に読み書きが発生する場合は、高速なストレージ(例:SSDタイプ)を選ぶと快適です。また、長期間保存だけしておきたいデータには、コストを抑えたストレージが向いています。EBS(エラスティック・ブロック・ストア)やインスタンスストアなど、それぞれの特徴を知っておくと選びやすくなります。(5)料金プランの確認最後にインスタンスの料金プランを確認しましょう。Amazon EC2には「オンデマンド」「リザーブド」「スポット」などの支払い方法があり、使い方によって最適なプランが変わります。短期的な利用にはオンデマンド、長期間安定して使う場合はリザーブドインスタンスがおすすめです。コストを抑えたいなら、空きリソースを活用するスポットインスタンスも検討しましょう。5、Amazon EC2における料金プランAmazon EC2では、利用スタイルに合わせて選べるさまざまな料金プランが用意されています。本章では代表的な5つのプランとその特徴について紹介します。(1)オンデマンド型オンデマンド型は使った分だけ料金が発生する一番シンプルなプランです。契約期間や前払いが不要で、使いたいときにすぐにサーバーを立ち上げられるのが特徴です。試験的な利用や短期のプロジェクトに向いており、柔軟に使える反面、長く使う場合はやや割高になることがあります。(2)リザーブド型リザーブド型はあらかじめ1年または3年の利用を契約することで、料金が大幅に割引されるプランです。継続的に使う予定のあるシステムやサービスにはこのプランが向いています。前払いの有無や金額によって割引率が変わるため、コストを抑えたい方には検討する価値があります。(3)スポット型スポット型はAWS内で余っているリソースを活用することで、通常よりかなり安い価格で利用できるプランです。ただし、リソースが他で必要になった場合には、インスタンスが急に停止する可能性があるため、急な停止に耐えられる作業(バックアップやバッチ処理など)に適しています。(4)長期利用における割引効果長期利用を前提にすると、リザーブド型やSavings Plans(節約プラン)を活用することで、大幅な割引が期待できます。例えば、同じスペックのインスタンスを3年間使う場合、オンデマンドに比べて最大70%ほど安くなるケースもあります。長期利用の見込みがあるなら、早めに契約することでコストを抑えることができます。(5)無料利用枠の活用方法AWSの特定のサービスでは、新規ユーザーを対象に無料利用枠が提供されています。例えば、Amazon EC2の「t2.micro」インスタンスについては、所定の利用範囲内であれば無料で使用することが可能であり、クラウドの試験導入や学習目的での利用に適しています。なお、利用上限を超過した場合には課金が発生するため、使用状況を定期的に確認することが重要です。6、Amazon EC2の料金プランの選び方Amazon EC2には複数の料金プランがあり、用途や期間に合わせて選ぶことで、無駄なコストを避けることができます。本章では、プラン選びで押さえておきたい3つの視点をご紹介します。(1)利用期間を見極めるインスタンスを選定する際には、利用期間をあらかじめ把握しておくことが重要です。例えば、数日から数週間といった短期間の利用であれば、柔軟に利用できるオンデマンド型が適しています。一方、1年以上の長期運用を前提とする場合は、リザーブドインスタンスやSavings Plansの活用によって、コストを大幅に抑えることが可能です。あらかじめ利用期間の見通しを立てることで、用途に応じた最適な料金プランを選択でき、無駄なコストを回避できます。(2)用途に最適化するインスタンスの利用目的に応じた適切な選定は、コスト効率の向上やシステム運用の安定性を左右する重要な要素です。例えば、バックアップや検証など、一時的で停止しても支障のない処理には、価格を抑えられるスポットインスタンスが有効です。一方で、業務システムのように継続的な稼働が前提となる場合には、可用性を重視したオンデマンド型やリザーブド型を利用することで、安心して運用を続けられます。(3)予算を計算する最後に、想定される利用時間や規模から、どれくらいのコストがかかるかを確認しましょう。AWSには「Pricing Calculator」という無料の見積もりツールがあり、インスタンスの種類や利用時間を入力するだけで、だいたいの月額料金を確認できます。予算に合わせたプランを選ぶことで、あとから思わぬ請求に驚くことも防げます。7、Amazon EC2のコスト管理に最適な「srest(スレスト)」Amazon EC2は、スピーディに仮想サーバーを立ち上げられ、スケーラブルで柔軟なクラウド環境を構築できる便利なサービスです。用途や期間に応じてインスタンスタイプや料金プランを選べば、コストを抑えながら快適に運用することができます。一方、利用が増えるにつれて「どこにどれだけのコストがかかっているのか分かりにくい」と感じることもあるかもしれません。弊社が提供するAWSコスト管理ツール「srest(スレスト)」は、Amazon EC2を含めたAWSサービスの利用コストをアカウント横断して一元的に管理をすることができます。「Amazon EC2を使っているけれど、料金管理が不安」「もっと効率よく運用したい」と思っている方は、ぜひsrest(スレスト)の導入もあわせて検討してみてください。