

2024.5.27
システムの安定稼働は、サービスの継続的な成功を支える上で必要不可欠です。
しかし、どんなに優れたシステムでも、不測の事態に遭遇する可能性があります。
ここで重要になってくるのが「インシデント管理」です。
本記事では、インシデント管理の基本から、そのメリット、適切なツールの選び方に至るまでを解説していきます。
インシデント管理とは、サービス運用中に発生した予期しない出来事や障害に対して、解決に向けて対応する一連のプロセスです。
目的は、サービスの信頼性を維持し、ビジネスへの影響を最小限に抑えることにあります。
システムにおける「インシデント」とは、サービスの品質低下や利用者に不便をもたらす全ての事象を指します。
これには、システムのダウン、機能の不具合、パフォーマンスの低下などが含まれます。
インシデント管理は、これらの問題を特定し、解決するためのプロセスを指し、ITインフラの健全性を保つ役割があります。
インシデント管理は、ITサービス管理の一環として、その重要性がますます高まっています。
サービス停止や遅延は、顧客の不満を招き、ビジネスに対する信頼性を損なうことになるため、インシデント管理はこれらのリスクを最小化し、ITサービスの品質を保持するために必要不可欠です。
インシデント管理の流れは、インシデントの影響を迅速かつ効果的に最小限に抑えるための一連のステップから成り立っています。
このプロセスを通じて、インシデントは管理され、解決に導かれます。
インシデント管理の最初のステップは、事象の認識と起票です。
この段階で、事象の詳細が記録され、インシデントとして正式に原因の調査・解消を開始出来る状態になります。
起票されたインシデントは、その性質と重要性に基づいて分類されます。
分類には、インシデントのタイプ、影響を受けるシステム、緊急性などが考慮されることが一般的です。
分類されたインシデントには優先度が割り当てられます。
これにより、人員を効果的に割り当て、最も緊急性の高いインシデントから対処することができます。
インシデントの種類と優先度に応じて、適切なスキルと経験を持つ対応者やチームが割り当てられます。
この段階で、問題解決に向けた具体的なアクションが開始されます。
インシデントの原因を特定するため、詳細な調査が行われます。
ここでは、技術的な分析や、関連するログファイルの調査などが含まれます。
原因が特定された後、暫定的な対応、または恒久的な対応により解決策が実施されます。
この目的は、できるだけ迅速にサービスを正常な状態に戻すことです。
インシデントが解決されたことを確認し、すべての関連情報を文書化した後、インシデントは閉じられます。これには、事象の文書化と将来への対策が含まれます。
インシデント管理の過程で直面する課題は多岐にわたりますが、以下で紹介するような課題を克服することが、サービス提供の品質保証に直結します。
以下に、一般的な課題を挙げます。
インシデントが発生したとき、迅速な情報共有は解決への近道となります。
しかし、多くの組織では、情報の共有が不十分なため、必要な対応が遅れがちです。
情報が一元化されていないため、インシデントへの対応は属人的なものになり、結果的にナレッジが一部の個人や少数のメンバーに留まってしまうことがあります。
この結果、その後の類似インシデントへの対応を改善する機会を失います。
インシデント管理においては、問題への迅速な対応だけでなく、発生しているインシデントの全体像を把握することも同様に重要です。
インシデント対応状況が不明瞭な場合、適切なリソースの割り当てや効果的な対応を妨げます。
これは、インシデントが多数発生している状況や、複数のチームが同時に対応を行っている場合に顕著になります。
可視化の不足は、結果的にインシデント解決の時間を延長させる原因となります。
インシデント管理におけるもう一つの大きな課題は、対応プロセスが統一されていないことです。
組織内で統一された対応プロセスが確立されていない場合、対応者はそれぞれ独自の方法でインシデントに対応することになります。
これは、対応の品質にばらつきが生じる原因となり、効果的な解決を妨げることがあります。
プロセスが統一されていない場合の弊害は、上記だけではなく、新規メンバーが対応フローに適応することが困難になり、教育やトレーニングのコストが増大してしまうことです。
インシデント管理プロセスを効率化し、上記の課題を解決するため、多くの企業がインシデント管理ツールの導入を検討しています。
こうしたツールを利用することで、以下のようなメリットが得られます。
問い合わせ情報の集約
迅速な対応
インシデント対応状況の可視化
インシデント管理ツール導入の最大のメリットの一つは、関連するすべての問い合わせ情報を中央集約することにあります。
これにより、インシデントに関連する通知、更新、解決策、およびその他の重要な情報が一箇所で管理されるため、情報が分散することなく、必要なデータに迅速にアクセスでき、問題解決に向けた作業が大幅に効率化されます。
この集約性は、インシデント発生時の混乱を軽減することに加えて、インシデントの履歴を通じて、過去の問題解決策を参照しやすくなるため、類似の問題が再発した際には、より迅速に対応できるようになります。
インシデント管理ツール導入のもう一つの重要な利点は、インシデント発生時の初期対応を迅速にすることです。
これは、自動化されたアラート機能、エスカレーションプロセス、そして効果的なワークフロー管理のような機能によって実現されます。
自動化されたアラートにより、インシデントの重要性と緊急性に基づいて、事前に定義された通知ルールに従って関連メンバーや管理者に即座に通知が行われます。
これにより、手動での通知プロセスに伴う遅延を無くし、インシデントへの初期対応時間を大幅に短縮することが可能となります。
インシデント管理ツールの導入がもたらすもう一つの大きなメリットは、インシデント対応状況の可視化です。
ダッシュボード機能やリアルタイムのレポーティングツールを通じて、インシデントの現在のステータス、影響を受けるサービス、対応に関わるチームの進捗などが一目でわかるようになります。
可視化によって得られる主な利点は次のとおりです:
リアルタイムの進捗追跡:インシデントの解決過程をリアルタイムで把握できるため、必要に応じて迅速にリソースを再割り当てしたり、エスカレーションを行うことができます。
影響範囲の明確化:インシデントが影響を与えているサービスやユーザーの範囲が明確になり、適切な優先順位付けと対応計画が可能になります。
パフォーマンス指標のモニタリング:インシデント応答時間や解決までの時間などのKPIを監視し、インシデント管理プロセスの効率性と効果性を評価できます。
インシデント管理ツールを選択する際には、組織の特定の要件に適合する機能性、コスト効率、将来的な拡張性を考慮することが重要です。
以下は、選択の際に考慮すべき主要な要素です。
導入コスト
要件に適した機能が備わっているか
連携の拡張性
インシデント管理ツールを選択する際、導入コストは重要な考慮事項の一つです。
コストには、以下のような複数の要素が含まれます。
初期導入費用:ソフトウェアのライセンス、カスタマイズや初期設定に関わるコスト。
運用コスト:定期的なメンテナンス、サポートサービス、アップグレード費用。
研修コスト:スタッフや管理者を対象とした製品研修やトレーニングプログラムの費用。
スケーラビリティに関わるコスト:将来的な拡張や追加機能の導入に伴う費用。
費用対効果を考慮する際には、単に初期費用だけでなく、長期間にわたる運用コストや、システムの可用性、信頼性がサービスに与える影響を総合的に評価することが重要です。
インシデント管理ツールを選択する際、自社のインシデント管理プロセスに適した機能を提供しているかどうかを検討することが重要です。
具体的には、下記のような機能が組織のニーズに合致しているかを確認する必要があります。
自動化されたアラートと通知:インシデントが発生した際に、関連するチームやメンバーに自動的に通知を送ることができる機能。
エスカレーションプロセス:一定時間内にインシデントが解決されない場合に、自動的に上位レベルの管理者やチームにエスカレーションする機能。
インシデントの追跡と管理:インシデントの登録、分類、優先順位付け、解決までのプロセスを一元的に管理できる機能。
レポーティングと分析:インシデントの傾向分析、パフォーマンス指標の追跡、レポートの自動生成などを支援する機能。
ナレッジベースとドキュメント管理:解決策の文書化、ナレッジの共有、過去のインシデントからの学習を促進する機能。
これらの機能は、インシデント管理プロセスの効率化、および対応品質の確保に直接寄与します。
インシデント管理ツールを選択する際には、その連携の拡張性にも注目することが重要です。
技術的な環境は常に進化しており、新しいツールやサービスが導入されることは日常茶飯事です。
したがって、選択するインシデント管理ツールは、現在利用しているシステムや将来導入する可能性のある技術と容易に統合できる柔軟性を持っている必要があります。
拡張性に優れたツールは次のような特徴を備えています。
オープンAPI:APIを提供していることで、他のシステムやアプリケーションとのデータ連携や機能統合が容易になる
カスタマイズ性:組織の特定の要件に合わせて、ワークフロー、レポートなどのカスタマイズが可能である
プラグインやアドオンのサポート:サードパーティ製のプラグインやアドオンに対応していることで、追加の機能やサービスを簡単に統合できる
スケーラビリティ:組織の成長や変化に合わせて、システムの規模を柔軟に調整できる
これらの要素は、インシデント管理ツールが長期にわたり組織のニーズに対応し続けることを可能にし、技術的な変化やビジネスニーズの進化に伴う調整や拡張が、追加投資や複雑な変更作業なしに行えるようになります。
効果的なインシデント対応について説明をさせて頂きましたが、最善な対応は重大なインシデントの発生を未然に防ぐことにあります。
インシデント発生のリスクを最小限に抑え、システム障害を未然に防ぐためにはどのような対策が有効でしょうか?
弊社サービスの「srest」ではその課題を、集約されたダッシュボードによる一元管理な方法で解決することが可能です。
ダッシュボード上で、プロダクトごとに各種インフラの監視を一元で行えることが特徴で、リアルタイムでシステムの健全性を把握できるため、潜在的な問題を早期に特定することが可能となります。
イベントログ検索・ソート機能・日付指定やフィルタ機能を用いて、イベントログを、サービスを横断した柔軟な検索を行うことで、複数のサービスに対して包括的に、重大なインシデントとなる兆候を確認することが可能です。
また、監視ツールで計測しているSLOの計測値を複数サービスを横断する形でsrest上で可視化することで、複数サービスの健康状態を一元的にチェックすることができます。
イベントログに対して具体的なアラート条件を設定することができ、設定した条件を満たすイベントが発生した際は、自動的にSlackやメール等のコミュニケーションチャネルを通じて通知が送信されるため、インシデントに迅速に対応することが可能です。
加えて、イベントログの収集により、一定期間内に繰り返し発生したアラートや、現在発生中のアラート情報をリアルタイムで可視化することが可能です。
リアルタイム可視化によって、複数サービスを運用している場合に発生しがちな、イベントログ見逃しやインシデントの見落としによる対応の遅延解消をサポートします。
インシデント管理は、IT運用において不可欠なプロセスです。
インシデントの迅速な発見、効率的な対応、そして解決は、ビジネスの継続性と顧客満足度を保持するために重要です。
本記事では、インシデント管理の流れ、対応における一般的な課題、インシデント管理ツールの選び方に焦点を当てて解説しました。
インシデント管理プロセスの成功は、適切なツールの選定に大きく依存するため、選択するツールは、組織の特定のニーズに適合し、コスト効率が高く、将来的なビジネスの成長や技術的な変化に柔軟に対応できるものを選択することをおすすめします。
お問い合わせ・資料ダウンロード
srestはAWS ファンデーショナルテクニカルレビュー(FTR)の認証を取得しています
FTRは、AWS上で稼働しているソフトウェアやSaaSがAWSのベストプラクティスに基づいて実装・運用されているかを「セキュリティ」「信頼性」「運用優位性」という3つの観点で評価する技術レビューです。