ログ監視とは、システムやアプリケーションが出力するログを収集・解析し、セキュリティ上の脅威やインシデントの兆候を検知する仕組みです。情報技術の進化とともに、システム安定運用やセキュリティの重要性が増しています。特に、システム内で発生するあらゆる動きを察知する「ログの監視」は、不正アクセスの早期発見や情報漏洩の原因となる動きの検知といったセキュリティ対策のベースとなるものです。1、ログ監視とは?ログ監視とは、システムやアプリケーションが生成するログデータを監視し、セキュリティ違反やシステムトラブルの予兆をいち早く察知するためのプロセスです。ログ監視は、不正アクセスや情報漏洩、システム障害といった事態を未然に防ぐため、または、発生した際の迅速な対応のために欠かせないものです。ログには、システム利用状況やエラーメッセージなどの詳細な情報が含まれており、これらの分析を通じてシステムのセキュリティを高めることが可能となります。(1)そもそもログとは?そもそもログとは、コンピューターやネットワークにおけるユーザーの活動やシステムの状態を記録したデータのことです。ログには、「アクセスログ」「イベントログ」「エラーログ」などがあり、これらはシステムが正常に機能しているか、セキュリティ上の問題はないか、またはシステム障害の原因究明など、運用上の重要なログになります。(2)ログ監視の目的ログ監視の目的は多岐にわたりますが、主なものとしてはセキュリティ監査とシステムの安定運用があります。セキュリティ監査では、ログを用いて不正操作の検出や情報漏洩の防止策を講じます。一方、システムの安定運用を目的としたログ監視では、パフォーマンスの低下を示す兆候や障害の前触れを迅速に捉え、予防措置を施したり障害発生時の対応時間を短縮することが目的です。セキュリティ監査とシステムの安定運用の目的を達成することで、サービスの信頼性を保ち、問題が発生するリスクを最小限に抑えることができます。①セキュリティ監査セキュリティ監査の一環としてのログ監視は、不正操作の検出や情報漏洩の防止に役立ちます。企業が直面するセキュリティリスクの中で、外部からの攻撃だけでなく、内部からの脅威も非常に重要な問題です。従業員による不正アクセスや情報の不正使用を未然に防ぐため、ログを通じてユーザーの活動を監視することが可能です。ログに記録されるデータの中には、どのユーザーがいつどのシステムリソースにアクセスしたか、どのような操作を行ったかなどの情報が含まれています。ログ情報を分析することで、不審なアクセスパターンや予期せぬデータの変更など、セキュリティ上の問題を早期に発見することができます。また、万が一セキュリティインシデントが発生した場合には、ログデータを利用して詳細な調査を行い、原因究明や再発防止策の立案に役立てることが可能です。セキュリティ監査におけるログ監視は、組織のセキュリティ体制を強化し、情報資産を守るために不可欠なプロセスです。②システムの安定運用システムの安定運用を目的としたログ監視は、異常の早期発見と迅速な対応を可能にし、システムダウンタイムの最小化やパフォーマンスの維持を目指します。ログデータにはシステムやアプリケーションの動作状況に関する情報が含まれており、これらの情報を定期的に監視・分析することで、システム障害の前兆やパフォーマンス低下の兆候をいち早く捉えることができます。たとえば、ディスクの空き容量が不足している、特定のエラーメッセージが頻繁に記録されている、応答時間が通常よりも長くなっているといった状況がログから読み取れます。それらはシステムに何らかの問題が発生している、または発生しようとしているサインかもしれません。ログ監視ツールのアラート機能を利用して上記のようなログを検知し、管理者に通知することで、問題が深刻化する前に適切な対策を講じることが可能になります。このようなプロセスにより、システムの安定性を維持し、インシデントによる影響を最小限に留めることができます。2、ログ監視の重要性ログ監視の重要性は、情報セキュリティの観点だけでなく、システムにおける業務の効率化とも深く関わっています。問題が発生した場合、ログはその原因を特定する証拠となります。これにより、問題の根源を迅速に解明し、再発防止策を立てることが可能です。ログデータを分析することで、システムの使用パターンを把握し、業務の効率化を図ることができるため、システムのパフォーマンス向上にも繋がります。(1)問題発生時の証跡問題発生時の証跡として、ログ監視の役割は非常に大きいです。システム障害やセキュリティ侵害が発生した際、ログは重要な手がかりを提供します。ログを分析することで、いつ、どのように問題が発生したのか、どのユーザーやシステムプロセスが関与しているのかといった詳細を明らかにすることができます。ログの情報は、問題の迅速な解決に不可欠であり、インシデントを防ぐための改善策を検討する際の基礎データとしても活用が可能です。(2)社内における不正防止社内における不正防止においても、ログ監視は重要な役割を果たします。ログを通じて従業員のシステム利用状況を把握することで、不適切な行為やポリシー違反を早期に発見し、適切な対応を取ることが可能になります。たとえば、不正な情報アクセスや不適切なリソースの使用がログに記録されていれば、それを根拠にして従業員への教育や注意を行うことが可能です。上記のような監視体制は、企業の情報資産を保護するだけでなく、社内のルールや倫理観を高めるためにも貢献します。(3)業務効率化業務効率化においても、業務プロセスの最適化や改善の機会を検討するために、ログ監視は重要な役割を果たします。ログデータを分析することで、システムの過負荷が発生している時間帯や、特定のプロセスが予想以上にリソースを消費していることが明らかになります。ログの情報をもとに、システムの構成を調整したり、不要なプロセスを削除することで、全体のシステムパフォーマンスを向上させることが可能です。結果として、従業員の作業効率が上がり、顧客に対するサービスの質も改善されます。3、ログ監視ツールの機能ログ監視ツールは、複雑化するIT環境の中で、システムやアプリケーションのログデータを効率的に監視し、管理するための機能を提供します。(1)監視機能ログ監視ツールは、システムやアプリケーションから発生するあらゆるログ情報を収集し、リアルタイムでのログデータの監視を可能にします。リアルタイムの監視によって、管理者は一元的にログデータを確認し、分析することができます。(2)検索機能ログ監視ツールは、大量のログデータの中から特定の情報を迅速に検索することができます。キーワード検索や時間指定検索など、柔軟な検索オプションで、問題解決の手がかりを素早く見つけ出すことができます。(3)アラート機能ログ監視ツールは、事前に定義したルールに基づいて異常を検知した際に、メールやコミュニケーションツールなどを通じて即時にアラートを発信することができます。アラート機能によって、管理者はタイムリーに対応が可能となり、問題の拡大を防ぐことができます。(4)レポート機能ログ監視ツールでは、ログデータを基にして定期的なレポートを生成する機能が備わっていることがあります。システムの利用状況やセキュリティインシデントの統計など、管理に必要な情報を視覚的にまとめて提供します。レポート機能によって、上層部への報告や監査対応、システム改善のための分析資料として役立つでしょう。4、ログ監視ツールの選び方ログ監視ツールを選ぶ際には、自社の要件に合った機能と性能を持つツールを見極めることが重要です。本章では、ログ監視ツールを選ぶ際に重要な2つのポイントを解説いたします。(1)目的や監視項目の要件監視ツールを導入する前に、自社のシステムで何を監視したいのか、どのようなセキュリティ対策が必要なのかを明確にする必要があります。どのような目的で、その目的を達成するためには何が必要かを考え、適した監視機能やアラート機能を持つツールを選ぶと良いでしょう。例えば、以下のような場合には、特定の種類のログや特定のシステム環境に特化したツールが最適となります。Webアプリケーションの脆弱性監視に特化したツールクラウドサービスのログ監視に特化したツールデータベースのアクセスログ監視に特化したツール(2)コストツールのコストは購入費用だけでなく、運用コストやライセンス等の維持費も含めて総合的に評価する必要があります。また、導入後に発生するかもしれないカスタマイズやアップデートの費用も考慮することが大切です。費用対効果を考慮して、最も効率的なツールを選ぶことが求められます。5、AWSログの横断監視をするには?弊社では、AWSのログ監視を効率的に行うことができる「srest」というサービスを提供しております。集約したログデータをダッシュボード上で一元管理することで、効率的なログ監視を行うことが出来るため、日常監視業務の負担を減らし、運用を効率化することが可能です。また、複数プロダクトのログ監視においても、ダッシュボード上でサービスを切り替えることですぐに確認することができるため、アカウント切替の時間の効率化や、監視漏れ等といった複数プロダクト特有の課題も解決します。(1)横断検索・横断可視化による効率的なログ調査イベントログ検索・ソート機能・日付指定やフィルタ機能を用いて、イベントログを、サービスを横断した柔軟な検索が可能なため、複数サービスを跨いだログ調査が効率的になります。また、監視ツールで計測しているSLOの計測値を複数サービスを横断する形でsrest上で可視化することで、複数サービスの健康状態を一元的にチェックすることができます。(2)リアルタイム可視化・通知による監視の見落としを解決イベントログに対して具体的なアラート条件を設定することができ、設定した条件を満たすイベントが発生した際は、自動的にSlackやメール等のコミュニケーションチャネルを通じて通知が送信されます。加えて、イベントログの収集により、一定期間内に繰り返し発生したアラートや、現在発生中のアラート情報をリアルタイムで可視化することが可能です。リアルタイム可視化によって、イベントログ監視の見逃しによる対応の遅延解消をサポートします。まとめログ監視は、システムのセキュリティ強化、問題解決の迅速化、そして業務の効率化に貢献する重要なプロセスです。本記事で紹介したように、ログ監視の目的やその重要性、そして効果的なログ監視を実現するためのツール選択には、さまざまな観点からの考慮が必要です。適切なツールを選択し、効率的なログ監視体制を構築することで、企業はセキュリティリスクの低減、システム運用の最適化、そして業務効率の向上を実現できます。