ITインフラストラクチャーは、データの保存、処理、共有を支える技術の総称です。近年はクラウドコンピューティングや仮想化技術の進化により、企業の運用効率が大幅に向上しています。1.ITインフラストラクチャーの基本概念について現代の社会において、私達はITインフラ無しでは日常生活が出来なくなる程、ITインフラと密接に関わっております。例えば、銀行ATMやキャッシュレス決済、更にはスマホのゲームまで全てITインフラの上で動作しています。これらのITサービスを支える基盤となっているインフラ部分を、本記事では解説します。(1)ITインフラの重要性ITインフラとは、冒頭で述べた通りITシステムを支える基盤のことを指しますが、それを構成する要素は様々で、サーバーやストレージ等のハードウェア、インターネットやLAN・WAN等のネットワーク、OSやミドルウェア等のソフトウェアでITインフラは構成されています。現実世界の家を例にしてITインフラを説明すると、サーバー等のハードウェアは土台や支柱に該当し、インターネット等のネットワークは電気や水道に該当し、OS等のソフトウェアは内装やレイアウトに該当すると言えます。そのため、安心安全に家に住むためには、インフラという土台が重要であることが分かります。インフラ部分は、人の目に触れたり、直接触ることが出来ないため、その存在を忘れてしまいがちですが、ITシステムの基盤となる、最も重要な要素です。(2)ITインフラの種類ITインフラを構成する要素として、以下の3つの主要なカテゴリに分けることができます。①ハードウェアハードウェアは、物理的なコンポーネント(要素)から成り立っており、以下のようなコンポーネントを指します。サーバーデータの処理やアプリケーションの実行を担当し、コンピューティングリソースである、CPU・Memory・Diskを主に提供します。サーバーは物理サーバとしても利用されますが、仮想アプライアンスを利用することで、コンピューティングリソースを分割し、一台の物理サーバー上で複数の仮想マシンを実行するためにも利用されます。ストレージデバイスデータの保存と管理を担当します。ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、ネットワークアタッチドストレージ(NAS)、ストレージエリアネットワーク(SAN)等、様々な種類があります。ネットワーク機器ルーターやスイッチ、ファイアウォール等のネットワークデバイスは、データの通信とルーティングの管理を担当します。②ソフトウェアソフトウェアは、ハードウェアを制御し、アプリケーションの実行とデータの処理をサポートしており、以下のようなコンポーネントを指します。OSオペレーティングシステム(OS)は、コンピューターシステム全体を制御し、ハードウェアとソフトウェアの間のインターフェースを提供するソフトウェアで、一口で説明することはできませんが、一例としてリソース・メモリ・プロセス・ネットワーク・デバイス等の管理を行っており、ユーザーやアプリケーションがハードウェアリソースを効率的に活用できるようになります。ミドルウェアOSとアプリケーションの中間に位置しており、ミドルウェアを活用することで、OS単体の基本的な機能では実現できないような複雑な処理を行うことが出来ます。例えば、Webサーバ・アプリケーションサーバ・データベースサーバ等があります。③ネットワークネットワークは、データの通信と転送を管理し、ユーザー、デバイス、サーバー間の接続を提供します。ルーター / スイッチデータパケットのルーティングとスイッチングを行い、異なるネットワークセグメント間で通信を可能にします。ファイアウォールセキュリティを強化し、ネットワークへの不正アクセスや攻撃からデータを保護します。ロードバランサートラフィックを分散し、サーバーへの負荷を均等に配分し、可用性を高めます。プロトコルインターネットプロトコル(IP)、トランスポートプロトコル(TCP/UDP)、HTTPなど、通信規約を指定し、データの信頼性とセキュリティを確保します。2.近年のITインフラにおける技術進化近年のITインフラにおける技術進化は、企業や組織の競争力を高める効率的な運用が可能となりました。ITインフラの技術進化の概要は以下の通りです。(1)オンプレミスからクラウドへ近年、多くの企業が従来のオンプレミスインフラストラクチャーからクラウドコンピューティングプラットフォームへの移行を進めています。クラウドコンピューティングは、ビジネスニーズに合わせてスケーラブルなリソースを迅速に提供し、従量課金制度によりコストを最適化できるため、効率性と柔軟性を向上させます。主なクラウドプロバイダーには、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP)などがあり、これらのプロバイダーはさまざまなサービスを提供しています。これにより、インフラストラクチャーの管理・運用にかかる負荷が削減され、企業はアプリケーションの開発にリソースを集中させる事が可能です。(2)仮想化技術とコンテナ化仮想化技術は、物理的なサーバーハードウェアを論理的な仮想マシン(VM)に分割することで、リソースの最適利用を可能にすることに加えて、VMは独立したオペレーティングシステムを実行し、異なるアプリケーション環境を隔離できるため、セキュリティと可用性が向上するメリットもあります。VMwareやHyper-Vなどのハイパーバイザーは、仮想マシンを効果的に管理するソフトウェアプラットフォームです。一方、コンテナ化は仮想化の更なる進化となり、アプリケーションとその依存関係を含む軽量なパッケージ(コンテナ)で、ホストOSとリソースを共有します。また、DockerやKubernetesなどのコンテナオーケストレーションツールにより、アプリケーションのデプロイ、スケーリング、管理が簡素化され、更に作業が効率化されました。(3)ITインフラのコード化インフラストラクチャーのコード化は、インフラをプログラムコードとして定義するアプローチです。Infrastructure as Code(IaC)として知られ、プロビジョニング、設定、監視などのプロセスを自動化し、信頼性の高い運用が可能となります。コード化のツールとして、TerraformやAnsible、Chef、Puppetなどが広く利用されており、インフラストラクチャーの変更がコードの変更として管理されます。これらの技術は、企業や組織が迅速かつ効率的にITインフラを構築・運用し、ビジネス目標を達成するための競争力を高めることに役立っており、セキュリティ、可用性、スケーラビリティといった要件にも対応し、デジタルトランスフォーメーションを推進する技術です。3.ITインフラエンジニアの業務内容ITインフラエンジニアの業務内容は、その名の通りITのインフラを扱うエンジニアとなります。一般的にクライアントが直接サービスとして利用するのはアプリケーション側になりますが、そのアプリケーションを動かすための土台であるインフラを扱う業務です。大きく「設計」「構築」「運用」と3つの業務フェーズに分かれており、インフラの「設計」「構築」を上流工程、「運用」を下流工程と分類します。本項目では、インフラエンジニアの中でも代表的な職種と近年の兆候をご紹介します。サーバーエンジニアネットワークエンジニア近年のインフラエンジニアの兆候(1)サーバーエンジニアサーバーエンジニアは、サーバーに焦点を当てた専門職であり、サーバーの選定から設計、構築、テスト、保守など、運用全般を担当します。サーバーはファイルサーバーやメールサーバー、Webサーバーなど多岐にわたり、近年ではクラウド化が進んでいるため、クラウドに関する知識も必要です。これらのサーバーの設計や構築だけでなく、障害発生時の対応も含めて運用と保守を行います。さらに、物理的な作業も業務に含まれており、サーバーを他の機器と接続するための配線作業なども行います。(2)ネットワークエンジニアネットワークエンジニアは、ネットワークに特化した職種です。コンピューターやサーバーを相互に接続し、信頼性の高いデータ通信環境を確立することが主な業務です。ネットワークの設計図を作成し、それに基づいてネットワーク環境を構築します。また、障害や問題が発生した場合にはトラブルシューティングを行い、運用や保守を実施してネットワークの安定性を確保します。(3)近年のインフラエンジニアの兆候近年のインフラエンジニアの兆候は、クラウドサービスの普及により、インフラ構築においては従来のサーバーエンジニアやネットワークエンジニアの枠を超える動きが強まっています。これまでのように単にサーバーやネットワークを構築・運用するだけではなく、クラウドサービスを利用したインフラストラクチャ全体を設計・構築・運用するスキルが求められています。また、インフラのコード化(Infrastructure as Code、IaC)が主流となりつつあり、IaCによって、インフラストラクチャをコードで管理し、自動化されたプロビジョニングや変更管理が可能となります。これにより、インフラ構築や運用における柔軟性や効率性が向上し、迅速な環境の構築や変更が容易になっています。この動向は、効率的で堅牢なインフラストラクチャの構築が可能な反面、インフラエンジニアにとって新たなスキルやツールの習得が求められています。まとめITインフラストラクチャーは、現代の社会において不可欠な要素となり、私たちの日常生活においても大きな役割を果たしています。本記事で説明した、ITインフラストラクチャーの基本概念と重要性の通り、ITインフラストラクチャーは、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなどの要素から成り立ち、これらが連携して動作し、様々なITサービスを支えています。また、最新のITトレンドについても触れましたが、オンプレミスからクラウドへの移行は、効率性、柔軟性、コスト最適化を迅速に実現できるため、今後、より多くの企業がクラウドサービスを活用するでしょう。仮想化技術とコンテナ化により、リソースの最適利用、セキュリティの向上、アプリケーションの効率的なデプロイが可能になりました。また、ITインフラのコード化は、プロビジョニングと設定管理を自動化し、信頼性の高い運用をサポートしています。これらの技術とアプローチは、企業や組織がビジネス目標を達成し、競争力を高めることに貢献し、セキュリティ、可用性、スケーラビリティといった要件にも対応しているため、デジタルトランスフォーメーションを促進する役割を果たしています。ITインフラストラクチャーは、今後も進化し続け、私たちの生活やビジネスをより良いものにしてくれるでしょう。